2016年6月21日

災害時のパニックを予防しようという配慮が、逆に被害を拡大させることがある 『人はなぜ逃げおくれるのか 災害の心理学』


災害時、人は案外パニックにならないものだ。それなのに、避難を誘導すべき立場の人たちが、被災者をパニックに陥らせないようにと考えて状況を過小表現し、それが避難を遅らせて被害の拡大につながる。本書で記されているこうした「パニック神話の弊害」は、もっと強調して広めるべきかもしれない。

本書を読んで特に良かったのは、今まで知らなかった災害や、知っていても詳しくはなかった出来事についての知識を得られたところ。以下、Wikipediaへのリンクとともに紹介。

ペルーのユンガイ地震
1970年、アンデス頂上の氷河が滑落し、氷石雪崩で5万人以上(!)が死亡。

明石花火大会歩道橋事故
事故そのものは知っていたが、原因を隠蔽しようとした画策については初耳。0歳から9歳までの子ども9人が亡くなったというのも、我が子ができた今では他人事ではない。

三豊百貨店崩落事故
韓国・デパート崩壊から19年 死者502人、沈没事故との共通点とは
地震でもないのに、まさかのデパート崩落。死者502名、行方不明者6名。経営陣は建物にヒビが入っていることを知りながら、「客は外に出すな」と指示して自分たちだけ逃げ出すなど、少し前に沈没したセウォル号を思い出すような事故である。

洞爺丸事故
台風によって起きた青函連絡船の事故。1155人が死亡。本書で紹介してある生存者の回顧録が凄い。冷静でいることの大切さを思い知らされる。


被災した人の心境として、一つだけショックを受けた発言が書いてあった。広島原爆の被災者で、
「もう一度ピカが落ちて、みなが同じようになればよい……」
と語った人がいるというもの。ほとんど同じ場所にいながらも、すべてを失う人と、あまり失わずに済む人がいて、その大きなギャップが不公平感を生み、被災者にこういう言葉を漏らさせる。なんともやりきれない話だ。

ふと、2011年4月末に南三陸町へ医療支援に行った時の光景を思い出した。地震と違い、津波は単純に土地の高低で被害が決まる。ほとんどを流されてしまった家から歩いて30秒もかからない、そんな「少し上のほうにあるお隣さん」はまったくの無傷という被災風景を見ながら、これは被災者の連帯意識を引き裂くのではないかという危うさを感じた。

タイトルは興味を惹くものだが、中身はわりと硬派で、全体としては可もなく不可もない。平成28年4月には熊本で大きな地震があり、改めて地震災害がクローズアップされているので、こうした本を読んでみるのも良いのではなかろうか。

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