2017年5月18日

日航機墜落事故で亡くなった同世代、健くんに想いをはせながら読む 『悲しみを抱きしめて 御巣鷹・日航機墜落事故の30年』


健くん、やっと会えたね。

1985年8月12日、俺は生まれて初めての一人旅で、初めて飛行機に乗った。俺が羽田空港に着いたのと入れ替わるようにして、一機の飛行機が伊丹空港にむけて飛び立った。御巣鷹山に墜落した日本航空123便である。

この事故で亡くなった人の中に、俺と同級生の少年がいたということを、10年ほど前の新聞で読んだ。彼も俺と同じく初めての飛行機、初めての一人旅で、甲子園での高校野球観戦が目的だったらしい。その記事を読んで以来、ずっと彼のことが気にかかっていた。日航機墜落事故の本を何冊も読み、ところどころに出てくる彼の話を目にするたびに、当時の自分が母に見送られて飛行機に乗る場面を思い出した。同じ日に、同じように初めての一人旅で、しかも一人で飛行機に乗るという共通点に、言い知れない因縁めいたものを感じていた。

今回、本書で初めて彼の写真を見ることができた。彼の顔をまじまじと眺め、こころの中で呟いた。

健くん、やっと会えたね。

同級生というのは勘違いで、彼のほうが一学年下のようだ。飛行機がトラブルにみまわれてからの30分近く、彼はどんな気持ちでいたのだろう。小学4年生だった俺の記憶をたぐっても、飛行機の中でどんなことを考えていたのか思い出せないが、かなりの恐怖だったのではなかろうか。そんな健くんのとなりには、22歳の女性が座っていたそうだ。そして、その女性の母によると、

「うちの娘は優しい子で、子どもが大好きだったんです。絶対に健ちゃんの手を、しっかりと握っていたと思いますよ」

健くんの母は、この言葉が立ち直るきっかけになったようだ。そして、なぜだろうか、俺もホッとした。

この事故に関する本は、これからも時々読むはずだ。そのたびに健くんのことを思い出すだろう。そして、君のことに想いをはせて、君が生きられなかった時間の大切さを噛みしめるよ。あの日、君と同じく初めての一人旅、初めての飛行機にトライした同世代として、そうせずにはいられないんだ。

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