2017年5月23日

名人・升田幸三の破天荒な将棋人生 『名人に香車を引いた男 升田幸三自伝』


精神科医としての第一歩を踏み出した病院には、将棋好きの先生が二人いた。二人は同期で、毎日の昼休みや仕事終わりに将棋を指して、勝った負けたと互いに一喜一憂していた。また、研修医時代に師事した精神科の先生もこの二人と同期で、この先生はなんとプロ棋士と対戦して勝ったことがあるという素人猛者であった。

そういう将棋環境(?)だったので、小学校時代にハマった将棋への興味が少しだけよみがえった。ただ、定石を覚えたり、詰め将棋をやったり、棋譜を研究したりするのがまったく性に合っていない。

ところが、数年前にたまたま読んだ『将棋の子』が面白く、続けて読んだ同著者の『聖の青春』がまた輪をかけて面白かったので、「将棋を読む」ことは好きになった。そこから将棋マニアでもあった団鬼六のエッセイを読みあさり、今回は名人・升田幸三の自伝である。

前評判は高かったが、一抹の不安はあった。上記のように、将棋そのものには興味がないので、棋譜がたくさん出てきたり、定石とか戦法とかの説明に多くを割かれたりすると嫌気がさすと思ったのだ。しかしそれは杞憂であった。升田幸三の大風呂敷な語りが妙に心地よく、少しも退屈することなく最後まで読んでしまった。いくらか棋譜は出てくるが、それは完全にスルーした。それでも楽しめるくらい面白い自伝である。

2 件のコメント:

  1. 升田幸三先生は講演をラジオ越しで聞いたことがあるし、死後になりますがテレビでの特集を観たことがあります。
    講演の内容に頭脳明晰を感じ、特集ではその破天荒ぶりが見事でした。
    まあ、頭が良くなければ棋士なんてできないと言われればそれまでですが、棋界は別世界ゆえに、たまに棋士がテレビに出演したりすれば、ありがたく鑑賞してます。
    折りしも、中学生の藤井聡太4段の連勝記録が話題になってます。
    投手の肩のごとく、脳みそも若くして磨り減るのか、あるいは生き方が世間ズレしてしまわないか、あそこまで若いと気にもなるのは、老婆心でしょうか。

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    1. >ししとう43さん
      升田幸三「先生」というところに、ししとう43さんの人柄というか、なんだかそういうものがにじみ出ている気がします。
      将棋も詳しくないけれど、将棋関係の本はとても面白いのでけっこう読みます。
      『将棋の子』を読むと、藤井4段の凄さや大変さも、なんとなく分かる気がします。気がするだけかもしれませんが(^_^;)

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