2017年8月17日

躁うつ病でもあった北杜夫が描く奇人・変人な精神科医たち 『どくとるマンボウ医局記』


「どくとるマンボウ」という言葉はずいぶん以前から見聞きしたことはあったが、それがどういう本なのかは知らなかった。まして作者が精神科医とは……、しかも躁うつ病を発症した精神科医とは想像だにしていなかった。

読んで知ったのだが、北杜夫の父は斎藤茂吉らしい。そして著者は、父である斎藤茂吉のことを「異常性格」と評していた。そういえば、夏目漱石も精神科的な問題を抱えていたらしいし、中島らもは躁うつ病とアルコール依存症があったし、海外の文豪にもてんかんや精神疾患のある人がいた。

こういう文豪や偉人たちの病気の話は国語や歴史では習わないけれど、追加情報としてもっと積極的に教えても良いのではなかろうか。そのとき子どもたちに伝えたいメッセージは、

「病気の有無にかかわらず、人は自ら成したことで評価される」

ということだ。歴史的人物の病気の話になると、ヘレン・ケラーや野口英世のように、
「こういう病気があったのに、それを乗り越えたスゴい人」
となりがちだし、その逆に、
「こういう病気があったからこそ、こんな素晴らしい仕事ができた」
ということにもなりかねない。

そうではなくて、彼らは「彼らが成したこと」で評価されている、ということを伝えたい。
「だったら、最初から病気の話なんて持ち出す必要はないだろう」
そんな意見もあるかもしれない。それも一理あるが、子どもたちには、
「あなた自身や家族で病気の人がいるかもしれないけれど、それでその人の価値が損なわれることも、逆に価値が高まることもなく、ただ行ないが評価されるのです。そして、あなたが誰かのことを判断するときも、持病の有無で評価を上下させないように」
ということを、偉人たちの病気の話を通じて学んで欲しい。

本書は、北杜夫が慶應大学病院の神経科(精神科)医局に在籍していた期間に出会った医師や患者にまつわるエッセイである。特に患者よりも精神科医のほうに奇人・変人が多くて、これは日常臨床(?)の感覚とも合致している。変人が多いと言われる医師の中でも、精神科というところは(以下自粛)。

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