2017年10月2日

セカンドオピニオン、特に医師にとってのセカンドオピニオンについて

セカンドオピニオンについて思うところがあったので書いておく。

患者から「他医にセカンドオピニオンをもらいたい」と希望された場合、「はいはい」と安易には応じない。まず現行治療への疑問や不安をしっかり確認する。

診断や治療開始の時点で患者や家族の強い納得が必要という場合は、こちらから「セカンドオピニオンをもらいに行きませんか」と勧める。

「セカンドオピニオンをもらいに行く」という行動は、患者や家族にとって金銭的にも時間的にも精神的にも大なり小なり負担であるということを、「セカンドオピニオンをもらいに行きたい」と言われた医師は認識しておかないといけない。

セカンドオピニオンをもらいに行くことが、本当にその患者や家族のためになると思えば、ためらうことなく送り出す。デメリットのほうが大きそうなら、そう考える根拠も含めて説明し、現行治療や診断についての疑問や不安を解消することに努める。

ぶっちゃけた話、「セカンドオピニオンもらいに行きたい」と言われた時、まったく何も検討せず「どうぞどうぞー」とやるほうが主治医は楽である。

しかし本当は、どうしてセカンドオピニオンを求めたくなったのか、いまの診断や治療への不安や不満は何か、セカンドオピニオンをもらいに行くことのメリットとデメリットなどを語り合うほうが有意義なのだ。ただし、主治医はとても大変。

「診断や治療に自信がないからセカンドオピニオンに行かせたくないんだろう!!」

と考える人もいるが、実際にはその逆。自信があって、
「行っても、きっとここと同じことを言われるだけ。お金と時間のムダになる」
と思っているからこそ、説明して、場合によっては引き止める。自信がない時には、むしろこちらからセカンドオピニオンを勧めるくらいだ。

セカンドオピニオンを求められる医師にしても、
「この人、こんな遠くから来たけど、いまの主治医のもとで治療継続するんだろうから、あまり極端な変更もできないよなぁ」
など考えると思う。変更したからには自分のところで引き受ける覚悟のある医師もいるにはいるけれど、医師に覚悟があることと、患者のアクセシビリティが一致するとは限らない。

たとえば、田舎の病院から都会の病院へセカンドオピニオンをもらいに行き、セカンド医師が
「今後はわたしに任せなさい」
とすべて引き受けて診断や治療を変更して通院開始したとする。しかし、急に悪くなった時に頼れるのは、交通手段や時間の関係から元々の田舎病院ということも多々ある。そして、元主治医が治療の大幅変更とその悪影響を見て仰天する、ということもある。

逆に、自分がセカンドオピニオンを求められた場合、紹介状がしっかりしていて診断・治療にも同意であれば、
「良い先生にみてもらっていると思いますよ。信じて治療を続けましょう」
と答えるだろう。

もらった紹介状がずさん、でも診断・治療には同意という場合、
「今のところは大丈夫そうです。でも、もしまた今度何か疑問や不安なことがあったら、遠慮なくご相談に来てください」
くらいに言うだろう。

セカンドオピニオンを求められて、主治医の診断・治療に同意できない場合の対応がちょっと難しい。紹介状の中身が濃い薄いにもよるが、基本的には「うちに転医するかどうか」と「緊急・急変時にはどこに行くか」を確認して、「うちに転医、急変時もうち」ということなら少しずつ方針変更することになると思う。

最後に。

医師にとって、
「セカンドオピニオンをもらいに行きたい」
と言われた場合に大切なのは、それを「現行の診断や治療に関する不安や不満を聴きとるチャンス」ととらえること。

「診療情報提供書の発行マシーン」になり下がってはいけない。

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