ペンネーム里見清一(本名は國頭英夫)先生による自伝的「小説」。そう、これはあくまでも小説であるが、臨床エッセイでもあり、自伝でもある。事実に虚構を織り込み、虚構に事実を忍ばせる。そのやりかたが非常に巧みで、実在しない大学名や病院名が出てこなければ、すべて真実と勘違いしそうだ。
里見先生自身の小児喘息体験に始まり、若手医師時代、そして中堅・ベテラン時代と、経験を積むにつれてなにかを得て、そして、なにかを失っていく。そんな自身の内面をかなり赤裸々に綴っていて、科は違えども同じ医師として、その正直さには好感が持てる。しかし、読む人によっては眉をひそめそうなところもある。
内容はとても素晴らしいものではあるが、いま現在、自分自身や家族が癌治療を受けている人が読むと、ショックを受けるかもしれないことも書いてある。だから、なるべく自分や家族が健康なうちに読んでおくほうが良い。
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