※左が邦訳版、右が原書。
危機の時代の最良のリーダーは、精神的に病気であるか、精神的に異常であるかのどちらかである。危機の時代の最悪のリーダーは、精神的に健康である。歴史上のリーダーのうち、精神的な病気あるいは精神異常のあった人たちと、対照的に精神的に健康であった人たちについて、精神医学と歴史学を駆使して考察した本である。
精神的に病気であることがリーダーとしてプラスになる場合があること、精神的に健康なことが危機の際にはマイナスになりかねないことを、多くの資料をもとに検証してある。少し強引さを感じる部分もあったが、精神科医の診療においても勉強になり、また一般の人が読んでも分かりやすく、そしてエキサイティングな読書になるだろう。
一ヶ所、思わずプッと吹き出したところがあるので引用。
薬を飲むことによって、精神疾患をもつ指導者から危機的状況における偉大な指導力が奪われてしまわないか、と心配される人がいるかもしれない。だがそんな心配はいらない。率直にいって、私たちが使っている薬は、そこまでは効かないのである。言っちゃうか! 『気分障害ハンドブック』で見せたガミー節、健在(笑)
もちろん、この後のガミー先生の言葉が大切。
薬を飲んでいる人のほとんどが、気分の浮き沈みのエピソードやさまざまな症状をもち続けている。薬はそれらの症状の頻度と重症度を減らすだけのことである。ただし、もし薬を服用していなかったら生じたかもしれない、自殺や、精神病症状の出現を薬は予防しているのである。購入を検討する人には、目次を記しておくので参考にして欲しい。
イントロダクション 正気というものの逆説(反転の法則)
[第1部 クリエイティヴィティ]
第1章 あいつらに俺たちのことを怖がらせるんだ──シャーマン
第2章 怒涛のように働き、宣伝することだ──ターナー
[第2部 リアリズム]
第3章 表が出ればそれは私が掴んだ勝利、裏が出ればそれはたまたま
第4章 荒れ野を逃れて──チャーチル
第5章 両方とも同じ聖書を読んでるんだ──リンカン
[第3部 エンパシー]
第6章 壁に飾られたミラー・ニューロン
第7章 偉大なる魂(マハトマ)たちの苦難──ガンディー
第8章 アメリカの魂への癒し(サイカイアトリー)──キング
[第4部 レジリエンス]
第9章 さらに強く
第10章 一級の気性──ローズヴェルト
第11章 宮廷(キャメロット)のなかの病──ケネディ
[第5部 治療]
第12章 薬が彼を成功させた──ケネディ再登場
第13章 ヒトラーの凶暴な発作
[第6部 メンタル・ヘルス]
第14章 平凡人(ホモクリット)のリーダーたち──ブッシュ、ブレア、ニクソンら
第15章 スティグマと政治
余談ではあるが、原書とは表紙が異なっている。この表紙の変更については、出版社の判断が適切だったと思う。原書の表紙のケネディは分かるけれど、あとはちょっと……。いっぽう、邦訳版の4人なら分かる気がする(ケネディ、ガンジー、ヒトラー、チャーチル?)。
これは手放さずに蔵書する。
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