2012年5月14日

白い魔犬

『名犬ジョリィ』というアニメがテレビで放送されていたのは1981年から1982年にかけて。内容はあまり覚えていない。ただ、ジョリィが「白い魔犬」と呼ばれていたことだけは覚えている。ジョリィがどういう経緯で「白い魔犬」と呼ばれるに至ったのか、そこが記憶にない。

同じ時期、7歳の僕らが「白い魔犬」と呼んで追いかけていた犬がいた。その犬と、いつどこで、どのようにして出会ったのか。そういう細かいところは全て忘れてしまった。記憶に残っているのは、その犬をみんなで白い魔犬と呼び、目的もなく探し、見つけては追いかけていたということだけだ。

白い魔犬は、ジョリィのような大型犬ではなかった。雑種の、どこにでもいる普通の白犬だった。七歳の僕らにしてみれば、充分に大きな犬ではあったけれど。田んぼ一面にれんげ草が生えていたから、季節は春だったのだと思う。

僕らが空き地で遊んでいると、白い魔犬がれんげ草から顔を出してこっちを見ている。僕らは「白い魔犬だ」と口々に叫んで、れんげ草の生い茂った田んぼへ入り追いかける。白い魔犬はスッと走っていなくなる。僕らが見失ってあきらめかけると、白い魔犬は少し離れた田んぼのれんげ草の間からひょっこり顔をのぞかせるのだ。そして、僕らはまた口々に叫ぶのだった。
「白い魔犬だ」

僕は白い魔犬を捕まえて、何かひどいことをしようなどとは考えていなかった。恐らく、他の皆だって同じだったと思う。僕らは追いかけることそのものを楽しんでいたのだ。そして多分、白い魔犬の方も、追いかけられるのを楽しんでいたような気がする。決して完全に逃げることはせず、日が暮れるまで付かず離れず。僕らの退屈な生活をちょっぴり刺激的にしてくれた。

アニメの白い魔犬がどうなったのかは覚えていない。現実の白い魔犬はというと、僕らが興味を失うのと同時に、僕らの前には姿を現さなくなった。あの犬は、なんだったのだろう。田舎に住むある種の物の怪だと言われても納得できる、そんな不思議な犬だった。

2 件のコメント:

  1. 同じだなあ。私達は名犬ラッシーだったかな。
    待てよ、追いかけたのはシエパードだったような気がする。
    あれはなんだったかな^^。

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    1. >佐平次さん
      名犬ラッシーは名前には聞いたことがあります。調べてみたらコリー犬でした。シェパード追いかけるって、結構怖いですね^_^;
      ある時期コリー犬が流行ったような気がします。あれはラッシー世代の人が犬を飼い始めた時期なんでしょうかね。

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