2012年11月23日

アリとキリギリス ~Hungry Bugs~

ひどく暑い夏。

アリたちは一生懸命エサを探しています。そんなアリたちを見てキリギリスたちは言いました。
「君たち、暑くないのかい?」
アリたちはエサを探しながら、口々にキリギリスに答えました。
「いま働かないと、冬が大変だよ」
「ただでさえ今年はエサが少ないんだぜ」
「君たちも働いたらどうだい?」
それを聞いたキリギリスたちは、バイオリンを弾く手も休めず言いました。
「僕たちの仕事は、これさ」
そして素晴らしいバイオリンの音色をアリたちに聞かせたのでした。音楽にさして興味のないアリたちは、キリギリスたちを無視してエサ探しを続けました。

さて、冬になりました。凍えて今にも倒れそうな一匹のキリギリスがいます。キリギリスはアリの家まで行きました。ドアをノックすると、アリが一匹出てきました。
「何だい?」
キリギリスは寒さで歯をカチカチ鳴らしながら言いました。
「エ、エ、エ、エサを、わ、わ、わ、分けてもらえないかな」
アリは首を横に振りました。
「あいにく今年の夏はいつもよりエサが少なくてね。こっちも手一杯で君に分けるエサなんてないんだよ」
キリギリスは泣きそうになりながら、さらに頼みました。
「そ、そ、そこをなんとか! お願いします!」
アリはため息をついて首を横に振りました。
「悪いけど自業自得だよね。開けっ放しは家が冷えるから、もう閉めるよ」
アリはそう言ってドアを閉めました。キリギリスはもう歩く気力もなく、その場に座りこみました。夏の華やかな生活が走馬灯のように思い出されます。キリギリスが夏の過ごし方を後悔し、自分の怠けた生き方を深く反省したその時、アリの家のドアがゆっくりと開きました。キリギリスが見上げると、さっきのアリが立っています。
「ア、ア、アリ君。どうしたん……」
寒さと疲れで、声は最後まで出ませんでした。
「ちょっとは反省できたかい?」
アリが言いました。キリギリスは言葉を出す力も無く、ただ小さく頷きました。アリが微笑みました。
「ホラ、つかまれよ」
そう言ってアリはキリギリスの手を取り立たせました。

暖かい家の中。外の世界とは大違いです。迷路のような家の中を歩きながら、アリが言いました。
「僕たち虫同士、助け合わなきゃ。さっき皆に叱られたよ」
アリたちの優しさに、キリギリスは涙をこぼしました。言葉が出なかったのは、寒さのせいじゃありません。
「さ、着いた。先に入りなよ」
アリはドアを指さしました。キリギリスがドアを開けると、そこには何百匹というアリたちがいました。皆、痩せた体で目は血走り、キリギリスを見た途端、一斉に歓声が上がりました。
「ア、ア、アリ君、こ、こ、これは一体……」
振り返ったキリギリスが見たのは、よだれをこらえ切れないアリの姿でした。
「寒さからは救ってあげただろう? 今度は君が、僕たちを飢えから救う番さ」



あら?

また誰かがドアをノックしているようですね。

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