2015年2月2日

自分の体で実験したい 命がけの科学者列伝


自らをモルモットにして科学に挑んだ人たちに関する偉人伝である。トンデモ科学者ではなく、彼らの実験は、後世に生きる我々の生活、医療に大きく貢献している。10人について、10章に分けて紹介してある。時どきプッと吹き出してしまうようなエピソードもあるが、いずれも一医療者として、彼らの姿勢に敬意を抱いた。

各章の内容を大雑把に紹介する。

第1章 あぶり焼きになった英国紳士たち 1770年代
人間はどれくらい高温に耐えられるのか。ガマン大会のように見えるが、人間の体温の恒常性を発見した偉大な実験。

第2章 袋も骨も筒も飲みこんだ男 1770年代
食べ物はどうやって消化されるのか。食事前に読むのはやめておこう。

第3章 笑うガスの悲しい物語 1840-1870年代
患者に痛みを感じさせずに抜歯や手術を行ないたいと考えた人たちの、悲喜こもごもの話。

第4章 死に至る病に名を残した男 1885年
ペルー特有の熱病の謎を解明するため、敢えて自らに感染させた若き医学生の物語。

第5章 世界中で蚊を退治させた男たち 1900-1901年
黄熱病の感染の仕組みを解明するため、自ら実験台になった人たち。

第6章 青い死の光が輝いた夜 1902-1934年
これはご存じキュリー夫人の話。

第7章 危険な空気を吸いつづけた親子 1880年代-1940年代
炭鉱、海底、高山など、特殊な環境で働く人たちが安全に呼吸できるようにしたいと考えた親子の話。エキセントリックだが、情熱たっぷり。

第8章 心臓の中に入りこんだ男 1920年代-1950年代
心臓カテーテル検査がどうやって生まれたか。今でこそ高度とはいえ田舎の病院でも行える手技だが、当初は「サーカス芸」として笑われた。野心的に自らの体を使って実験を成功させたヴェルナー・フォルスマンは、しかし実験の中断を余儀なくされ、最終的には10年以上たってから別の二人の医師が初めて患者に応用する。その二人の医師とフォルスマンの3人がノーベル賞をもらった。

第9章 地上最速の男 1940年代-1950年代
航空機や戦闘機、自動車に乗る人たちの安全性を高めるため、自ら音速からの急停止にチャレンジした男の話。彼のおかげで今の自動車は大幅に改良された。そして彼はこの実験のせいで後遺症がたくさん。

第10章 ひとりきりで洞窟にこもった女 1989年
隔離環境下で人間にどんな影響が出るかを調べるため、実験に協力した女性。この人は科学者ではなくインテリアデザイナー。ちなみに同様の実験の後に自殺した人が数人いる。


個人的には、同様の本でこちらの方がお勧め。
『世にも奇妙な人体実験の歴史』のレビュー

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