2016年6月16日

ほろ苦くなるようなノスタルジック・コメディ 『ブラック・ジャック・キッド』


第19回日本ファンタジーノベル大賞で、大賞の次である優秀賞を獲った作品。この賞の第1回大賞受賞は酒見賢一の『後宮小説』。これは事前の評判も知らず読み始めてグイグイ引き込まれ、なんて面白い小説なんだと感動した。同じ酒見賢一の『墨攻』も非常に面白くてお勧め。

本作『ブラック・ジャック・キッド』も優秀賞を獲っただけあって、読みやすくて面白かった。ただ、「ファンタジー」の縛りがあるからか、ほんの少しだけ霊的なものが登場するのだが、それが全体から見れば無駄な贅肉のように感じられた。ばっさりと削り取って、「非ファンタジー」路線のノスタルジック・コメディとして描いたほうが良い作品になったのではないだろうか。また、どうしても「ファンタジー」を盛り込む必要があるのなら、「霊的なもの」をもう少し丁寧に描くか、きれいに回収できる伏線を盛り込むかしたほうが、読後の気持ち良さは上がっただろう。

このように、読者としての「痒いところに手が届かなかった」不満を指摘できるくらい、全体としてまとまった良い作品だったと言える。しかし、逆に敢えて苦言を呈するなら、「痒いところに手が届かなかった」から、大賞ではなく優秀賞で終わってしまったのだろう。

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