2016年7月12日

これが9・11後のアメリカにおけるセキュリティの現実なのか…… 『プロファイリング・ビジネス 米国「諜報産業」の最強戦略』


これはSFではない。現実の話である。

2001年9月11日、誰も想像しなかったようなアメリカでの大規模テロが起こった。その日を境に、アメリカはコンピュータによる監視社会への道を突き進む。

セキュリティを高めるために人物を確認する技術はどんどん進歩した。その中でも顔の画像や体の動きで人を認識するような技術は、空港や街中にある監視カメラに応用され、不審人物がいないか常にチェックしている。

ところが、たとえこの技術が完璧であったとしても、照会されるデータベースが不完全では意味がない。それどころか、データの間違いで無実の人がテロリストや重罪犯として誤認逮捕されたり、無用の尋問や取り調べを受けたり、空港で足止めを食らったりする事例が実際に少なからず起こった。こうした状況について、
「テロや犯罪に巻き込まれる恐怖より、政府から監視される安全のほうが良い」
そう考えるアメリカ国民も多いようだ。もちろん、監視体制に反対する人たちも多い。本書は10年ほど前の本だが、おそらく現在も監視強化の賛成派と反対派は火花を散らしているだろう。

本書が著された10年前でさえ、これほどの技術が、こんなにも幅広く用いられているのかと驚くほどなので、今現在は凄いことになっているのではなかろうか。そして、それほどに強まった監視体制があってさえ、先日のフロリダ銃乱射事件が防げなかったことを思うと、この殺伐としたイタチごっこには寒々としたものを感じてしまう。

このような状況に陥るのに、9・11のテロが少しでも影響を与えたのだとしたら、それは「アメリカ人を少しでも不幸にしてやる」というテロリストの思惑が成功したと言えるのではなかろうか……。

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