放射線画像を「読む」には大まかな作法がある。その作法に則れば見落としがない、というわけではなく、知識や経験が大切で、何より「最低限のセンス」が必要である。このセンスは、一部の医師だけが持つものでなく、「一部の医師だけが持たない」ものである。
この「最低限のセンス」を持たない人は、おそらく絵も苦手だ。医学部の組織学や病理学でのスケッチも下手。病理スライドを見ても、どれも同じに見えてしまう。こういう人は、皮疹の鑑別も上手くできないだろう。
これは実は俺のことだ。俺も「最低限のセンスを持たない」うちの一人で、理論がしっかりしているはずの心電図も不得手。脳波はかろうじて「極端な異常」なら拾えるレベル。こうした視覚系の検査に比べて、血液生化学検査は数値がはっきり出てくるので、地道に追えば確実に読める。だから、好きだ。
ところで、相手の表情を読めない人というのは、きっと俺が放射線画像や病理スライドを前にした時のような感覚になるのだろう。体系的に読む作法を身につけ、知識や経験を積み、多少は読みとれるようになったとしても、「最低限のセンス」の欠如のせいで、他の多くの人のようにきちんと読みとれているとは言い難い。
すべてを完璧にできる医師はいない。だからこそ、医療は各科・各医師がカバーしあうことで成り立っている。同様に、すべてを完璧にできる人はいない。互いにカバーしあうのが大切なのは、社会でも家庭でも、どこに行っても同じである。
画像が苦手な俺でもきちんと追える数字で見える血液検査を、もっと勉強したいと思って購入。すごく良い本だった。
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