2017年9月14日

交通事故の偽装を見破れ! 『現場痕』


交通事故と損害保険をテーマにしたミステリ短編小説集である。主人公は元刑事で、損害保険の代理店・志摩平蔵。愛妻を交通事故で喪ったことがきっかけで刑事を辞め、損保代理店として働いている。元刑事としての観察力や執念で、偽装された事故を追究し、無念の被害者を救い、卑劣な偽装犯を炙り出す。

著者がもともと生損保代理店を経営していたこともあって、損保にまつわることが分かりやすく書いてある。六つの短編はどれもそれなりに面白いのだが、ミステリの伏線や謎解き部分がシンプルすぎたり、冗長だったり説明的すぎたりという欠点はある。また別々の時期に発表された短編をまとめたものなので、主人公をはじめとした主要人物に奥行きが感じられず、その点ではちょっと残念だった。とはいえ、魅力的になりそうなキャラが多いので、いずれ長編小説にしてもらいたいと思うような素敵な一冊だった。

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