2015年8月25日

俺には分からない「お医者さま」の感覚

またしても内科の後輩医師とバトルになってしまった。

常々、外来クラークさんからは、外来にしろ病棟にしろ、いろいろな出来事に対して、
「先生、よく怒らずにいられますね」
と感心される。今日の場合、そのクラークさんも流れをよく知っていて、
「先生、よく激怒せずにいられましたね」
と言われた(笑)

ある内科医から俺あてへの紹介状があり、こんな返事をした。
「入院主治医が指揮をとって、ケアマネらと連携してケア会議や退院調整をしてはどうでしょうか」
これに対して、もの凄い勢いで電話がかかってきて、
「入院主治医とか関係ない! そっちは精神科の外来主治医だろ! ケア会議なんかもそっちがやるべきでしょ! こっちは器質疾患をみるんだ!! 体をみるんだ!!」
おいおい……、人をみろ、人を……。

俺の感覚では、
「入院主治医は、その人の入院と退院に関して責任を持つ」
ということ。それは「病気をみる」のではなく「人をみる」ということにつながる。入院中の患者に関して、自分の科でやることはやったのだから、あとは他科が責任を持つべきだという感覚は、少なくとも俺の医療観にはない。

最大の疑問は、なぜ同科の諸先輩が彼に厳しく指導しないのかということ。俺は今日、彼と電話していて、年上かつ経験年数も上かつ他科医師である俺に対する彼の言葉遣いのあまりのひどさに、彼のいる場所を確認してビンタを張りに行こうかと思ったくらいだ。では、どういう会話だったのかというと……。

先週、内科から精神科への転棟を断って、今週、同じ患者で紹介状があった。最後の文章はこうだ。
「精神科の介入する余地はないのでしょうか?」
これに対し、
「精神科介入は外来フォローで充分です」
と回答したら、それがどうも彼の気に入らないらしい。まわりまわって聞いた話では、薬の調整を希望(本当は転棟が第一希望みたいなんだけれどね)していたらしい。そこで直接電話した。

向こうはやたらに興奮していて、こちらの話が入っていかない。
「うん、ちょっと聞いて。ねぇ、ちょっと聞けるかな? おーい、ちょっとこちらの話も聞いてねー」
このフレーズを何度も繰り返した。彼に対して、「薬の調整が希望なら、紹介状にそう書くべきなんじゃないの」と伝えると、
「先生、子どもじゃないんだから分かるでしょ? 過去のカルテみました? 患者みました?」
うん、ビンタしようか?(笑) ちなみに彼はカルテはほとんど書いていない。というか、患者が入院した日を除いて、その後の3週間、患者にも家族にも一度も会っていない。

紹介状は小説でも詩でもない。ビジネス文書であり、行間を読むということは要求されない。事前に電話相談でもしていない限り、書かれていないことは書いていないことと同義だ。そして、院内紹介状をもらった医師が、その患者の過去カルテを読むかどうかは任意である。過去カルテを読まなくても、いまの状態と困っていることが具体的にきちんと伝わるように書くのが紹介状である。ザザッと紹介状を書いて「あとは過去カルテを読め」というような姿勢は、俺の医療観および社会人としての常識とは大いに異なるし、そんな雑なパスは受けかねる。

紆余曲折のやり取りの結果、彼はカルテにこう記した。
「長年みている精神科医がなにもしてくれない方針らしい」
そこで改めて電話して聞いてみた。
「この人の精神科の初診、いつか知っているの?」
「知りませんよ!」
おいおい……、「長年」はどこへ行った? 正解は去年の6月である。さすが、過去カルテを読まない医師。ちなみに電子カルテで、今年の4月にさかのぼるだけで精神科に関しては全て分かる。

地雷医師を踏まない、ということは医療ユーザーにとっては大切な情報、というか、名医を探すよりも切実かもしれない。相談される医師としても、自信をもって名医と言うのは難しいけれど、地雷はしっかり指摘できる。そういう意味で、医師と仲が良いとあれこれ教えてくれますよ。

2 件のコメント:

  1. おかしいですね、その内科医先生。年下だし、後輩だし、社会人としても医者としても内科医としても未熟な気が・・・きっと、患者さんや家族も不安持ってるでしょうね。一番の被害者は患者さんかも・・・
    とりあえず、その内科医先生とは今後も付き合っていかなければいけないし、まぁ、何とか、うまく接して、彼が成長してくれるのもほんの少し期待しながら、やってくしかないでしょうね。
    根本的な問題は、内科や外科の体の先生や看護師さんは精神科の患者さんに偏見や拒否感をもってることじゃないでしょうか?認知症の専門医や精神科に任せないで、すべての医療関係者が高齢者や精神科の患者さんの対応の基本を習得してもらうことでしょうね、これから高齢化社会なのだから。。。意識改革してもらいたいですね。

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    1. >匿名2015年8月26日 22:10さん
      俺自身は呆れ果ててもう諦めていますが、内科の先輩医師らがどうなのかは分かりません。
      こういう医師とも接することで、俺自身のこころの成長につながれば良いかくらいの感覚でいます。彼が受け持つ多くの患者には可哀そうだと思いますが、医師との出会いもその患者さんの運のうち、とも思いますし……。
      仰るとおり、特にその内科医の場合、精神科への偏見は強いようです。彼が赴任当初、病棟に診察にきた時に患者さんへの態度のあまりの悪さに、病棟の看護師とでバトルになったそうですから……。

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