「痛み」というのは客観的な評価ができず、本人にしか分からない悩ましいものである。その痛みが、妄想を引き起こすことがある。たえばこんな感じ。
「頭が痛い、治らない、なぜだ……、なぜだなぜだなぜだなぜだ……。!!そうか!! 宇宙人が頭に機械を埋め込んだんだ! なに? 宇宙人じゃない? だったら誰だ? CIAか。さもなければ……、あっ! この前うちに来た宅配屋か! そういえば手に何か機械を持っていたが、あれがスイッチか……」
こういう「身体的な痛みと、それにまつわる妄想」を抱く人に出会ったときには、まず「痛みそのものは本物だ」と考え、痛みへの配慮を示すことだ。
「とても痛そうだけど、大丈夫?」
これくらいシンプルで良い。妄想についての話は、ずっとずっと後まわしでかまわない。
診察室で患者に、
「痛そうだけど、大丈夫ですか?」
と声かけすると、付き添いの家族などが、
「いやいや先生、これは妄想ですから」
などと口を挟むことがある。患者に向かって
「あんたも変なことばかり言わず、ちゃんと先生に治してもらいなさい!」
みたいなことを言う人もいる……。
こういうケースをみると、もしかすると、本当にある原因不明の「痛み」について周囲の理解や同情が得られず、その辛さが妄想を引き起こしたのではなかろうか、なんて考えることがある。
痛みにまつわる良質な臨床ノンフィクション 『この痛みから解放されたい ペインクリニックの現場から』
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