2018年6月14日

情報伝達の55%を担うボディ・ランゲージに関するライトな専門書 『本音は顔に書いてある』


人が情報を伝える時、言葉そのものが果たす役割は全体のわずか7%に過ぎず、声の調子やイントネーション、声以外の音が38%、言葉以外の表情や態度が55%もの割合を占めているという。

本書はいわゆるボディ・ランゲージに関するライトな読み物である。情報伝達において役割の55%を占めるという表情や態度に関して、参考になる話がわりと多い。ただし、すべてを完全に真に受けるのは問題だろう。というのも、お国柄、国民性というものもあるからだ。

本書の中から精神科臨床に役立ちそうな話を一つだけ紹介。

ノースカロライナ大学の心理学教授が行なった実験で、まず、うつ病の初期症状を示している人を二つのグループに分けた。それぞれにコメディ映画とそうでない映画を3週間にわたって観てもらったところ、コメディグループのほうは明らかに症状が改善した。また、同教授は潰瘍患者がそうでない人に比べて眉をひそめる表情が多いことにも気がついた。

固有反射心理学の研究で分かっているのは、気分とは無関係に「意図的に笑顔を作る」だけで、脳が刺激を受け幸せな気持ちになるということだ。これを精神科に応用するなら、例えば精神科の作業療法の一環として映画鑑賞があるが、患者の精神衛生を改善させるにはどういう映画が良いかの参考にできそうだ。

本書はタイトルからすると表情に関する本のように見えるが、原題は、『The Definitive Book of BODY LANGUAGE』であり、表情以外にもたくさん記述してある、というより表情に関する記載はごく一部である。目次から抜き書きして紹介してみると、

・手のひらと握手で相手を支配する
・笑いという魔法
・腕が発するシグナル
・手と指に注目
・嘘は手と顔に出る
・本音は脚に聞け
・なわばり感覚とパーソナルスペース
・動きをまねれば心が通う
・タバコ、メガネ、メーク - 雄弁な小道具たち
・高さと地位の微妙な関係
・仕事に役立つボディランゲージ

興味がある人は読んでみると良い。量は多くないしイラストもたくさん使われているので簡単に読み終えることができる。ちなみに著者は、一時期有名になった『話を聞かない男、地図が読めない女』を書いた人である。

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