2018年9月11日

怪物の独白が凄まじい 『フランケンシュタイン』


フランケンシュタインというと「頭に釘の刺さった怪物」を思い浮かべる人も多いかもしれないが、『フランケンシュタイン』はヴィクター・フランケンシュタイン博士の苗字であり、博士によって創りだされた怪物には「怪物」という名前しか与えられていない(これもまた「怪物」の哀しみを引き立てる)。

大雑把なストーリーは、ロバート・デ・ニーロの映画『フランケンシュタイン』がわりと忠実になぞっている。ただ小説では、怪物を創りだす工程についての記述はほとんどない。映画のほうが人体を継ぎあわせたり電気を用いたりと「もっともらしく」描かれていた。それもそのはず。この小説はいまから200年前の1818年に発表されているのだ。そんな古い時代に、これほどのものが書かれたのだから驚きである。

さらに驚くのは、この小説を書いたのが、当時まだ20歳だった女性作家メアリー・シェリーだということ。20歳! しかも処女作である。おそろしい才能だ。

構成は大きく三つに分かれており、まず怪物を生み出すまでのフランケンシュタイン博士の青春が語られる。次に怪物が、生まれてから博士に再会するまでの苦労を独白する。この部分が本当にすごい。苦しみや哀しみがひしひしと伝わってくる。後半は博士と怪物の静かなる対決で、現代人の感覚からすると怪物に同情的になるのではなかろうか。
「博士、可哀想じゃないか、どうにかしてやってくれよ!」


映画でも感じた切なさは、小説のほうがより強く滲み出ている。改めて、デ・ニーロの映画を観たくなった。

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