本書の時間軸は長く、若いころのレオから60歳を目前にしたレオまである。メインは60歳目前のほうである。そして、基本的には冒険活劇なのに、主人公である初老レオが決して大奮闘しないのが本書の特徴だろう。
もちろん、ちょっとしたアクションシーンなどハラハラするような場面はあるし、旧ソ連のピリピリした緊張感も漂っている。しかし……、ネタバレになるので多くは書かないが、過去2作に比べると、レオは大奮闘しないのだ。そして、それがとても良い。レオという男性の、人間的な弱さと強さ、衰退と成長、失望と希望、そういったものがうまく描かれており、三部作の中では本書が最高である。
この三部作、2作目の『グラーグ57』が終盤でちょっと息切れするようなものだったが、すべてを読み終えて、とても素晴らしい作品だと感じる。
<前2作>
まだ読んでいない人が羨ましい! 『チャイルド44』
人間的に決してタフとは言えない捜査官レオが、こころと体を痛めつけながら懸命に戦う 『グラーグ57』
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