2018年12月4日

『ウォッチャーズ』が好きなら本作もお勧め! 『ミスター・マーダー』


この作品の魅力をネタバレせずに紹介するには、どうすれば良いだろうか……。難しい。

追いかけてくる悪者、逃げながら戦う主人公という構図は、評価の高い『ウォッチャーズ』と同じ。

本作には明らかなテーマがあり、それは「小説 vs 映画」である。主人公は小説家で、悪役は映画好き。それぞれの思考回路は、小説家が「考えすぎ」、悪役は「行動あるのみ」。はたして、勝つのはどっちか。

もちろん作者のクーンツ自身が小説家だし、小説のほうが映画より強い、という感じにはなっている。ただし、読みながら「クーンツもかなり映画好きなんだろうなぁ」と思うくらい、映画についての話が出てきた。

視点は、主人公、ヒロイン、主人公の娘、悪役、悪役の親玉を行きつ戻りつするが、そのなかで巧みだったのは、悪役視点でのパートが常に「現在形」だったこと。「彼は見た」ではなく「彼は見る」、「そして考えた」ではなく「そして考える」。このように、ずっと現在形での表現が続く。若干のネタバレになるが、この悪役には「過去」がない。一貫して「現在形」を用いることで、そのことを表現しているのだ。うーん、すごい。

『ウォッチャーズ』が面白かった人には手放しでお勧めできる作品。

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