2012年12月2日

酔いつぶれてしまった友人の背中に丸文字で落書きした話

「浮気しちゃぃやョ!! カォリ」

五年前、酔いつぶれてしまった友人の背中に丸文字で落書きした。仲間5人で爆笑しながら、彼の背中の写真を撮った。それから数日後、友人は彼女と非常に険悪になった。彼女は背中の落書きについて、彼を問い詰めてはいないようだった。女のプライド、だろうか。冷たくなった彼女の態度に、理由が分からず悩む彼。俺たちは、落書きのことを言いだせなかった。

さらに数日後、友人は彼女と別れるかもしれないと言いだした。彼は、彼女の不機嫌の理由を知らない。この状態になって、俺たちも動揺し始めた。三年近く付き合ってきた二人。彼らを破局に導こうとしているのは、俺たちの悪ふざけの落書きだ、多分。いや、多分じゃないか。

数週間後、合コンざんまいの彼がいた。半ばヤケッパチに遊びまくる彼を見て、俺たちは胸を痛めた。合コンで酔いつぶれた彼の背中に、
「ゴメンよ」 「許してくれ」 「すまん」 「申し訳ない」 「カォリ」
と寄せ書きをした。そして、やはり、爆笑しながら写真を撮った。毎度、このグループは悪のりが過ぎるのだ。もちろん、彼がその落書きに気づくことはなかった。

数ヶ月後、元彼女は、やはり耐えきれなかったのだろうか。久しぶりに彼に連絡をとってきて、「カオリって誰よ」と彼を問い詰めたらしい。その時になって、彼は初めて俺たちのイタズラを知ったのだった。だが、彼は俺たちに対して怒らなかった。彼女に対しても、一切の言い訳をしなかったようだ。気持ちのいい男なのだ、彼は。

五年後、つまりつい最近、彼と彼女から結婚式の招待状が届いた。結婚式に参加した俺たち悪い友人五名。披露宴での出し物は、誰が言いだすともなく決まっていた。フンドシ姿にTシャツでステージに上がる俺たち。一気にTシャツを脱ぎ捨てて、新郎新婦に背中を向けた。背中には、お互いにマジックでデカデカと書いた、

「お」 「め」 「で」 「と」 「う」

会場で一人、彼だけが大爆笑。不思議顔の新婦に、彼が顔を寄せて何か話していた。彼女はみるみるうちに泣き出して、それから笑いだして、半泣き半笑い。きょとんとしている出席者たち。新婦が、笑ったり泣いたりしながら、ステージまでやって来た。それから、一発ずつ、全員ビンタされた。落書き事件から五年目にして、俺たちの罪は洗い流されたのだ。

「奥さん、別れてください。 カオリ」
数時間後、二次会で酔いつぶれた新郎の背中を優しく見守る俺たちがいた。

7 件のコメント:

  1. 雪花菜(おから)2012年12月2日 10:35

    初めまして。いつも拝見していますがコメントは初めてです。

    今回のは総毛立ちました。この悪友達の行動は、なんだかいじめの構図に似ていませんか?
    自首自白せずに模様眺めをしていて、「おめでとう」でビンタでチャラ。
    「罪は洗い流された」って?しかも二次会でまた?

    こいつらビンタでなく、グーでなぐってやりたい。
    説明されない彼女の葛藤がどんなものだったか。
    今回これだけですと登場人物の誰にもまったく共感できないので
    ぜひ続編をお願いします。

    返信削除
  2. 雪花菜(おから)2012年12月2日 13:53

    (続き)
    友人数人とこの話をしたら
    「男はそういうばかなことをするもの」であり、
    どうも私は「男のノリがわかっていない」らしい…むむむ。そうなんだろうか。

    ますます『彼女』のお話を読みたい。
    白黒つけた彼女によって、結局はみんなが救われたんですよね。

    返信削除
    返信
    1. >雪花菜(おから)さん
      念のため書いておきますが、実話ではありませんよ!! 俺はもう少しまともな人間です、と自分で信じています。でもこんな話を思いつくくらいだから、まともではないのかも……。
      この話、mixiに載せた時には男性陣のウケは良かったんですよね。やっぱり男女の違いというか、被害者視点というか、そういうものが関係しているのかもしれません。

      削除
    2. 雪花菜(おから)2012年12月2日 20:30

      主さま

      いやいやもちろん「創作小説」として読みました。
      うーん、私としては、「な・な・なんかヤバイ展開??」となったときに
      潔く、写真持参の上、首をしっかと洗って、アホ5人そろって
      彼女に頭下げに行くって選択肢はないものか?と思うんですね。

      どうもね、
      彼女が「カオリって誰?」という行動に出なかったら
      5人はどうしたろうか?というところに不穏なものを感じるのですね。
      だんまりを決め込むのか?
      時期を見て、「ゴメーン」と彼に謝るのか?
      彼と仲間達は、仲良くやれるのか??

      まぁでも、女は背中にマジックなんて幼稚な挑発はしないと思うので
      すぐにイタズラ?って気がつくかもしれませんが。

      今後も創作小説楽しみにしています。
      ご紹介の本も何冊か買って読みました。勉強になりました。
      サクラちゃんに癒やされております。

      削除
    3. >雪花菜(おから)さん
      ふと思い出しました。この話のちょっとしたポイントに、仲間のために人前で裸になれるか、というものもあったのでした。結婚式で裸になってお祝いするほどの仲だ、ということなんですが、これまら女性陣からは「?」な感覚かもしれませんね^_^;

      今日のエントリは、サクラを題材にした創作小説ですので、そちらでぜひお口直しを!!(笑)

      削除
  3. う~~ん 私にもわからないなあ、このいたずら。
    結局 これは 奥さん相手のイタズラで 
    彼女の反応を楽しんでるんでしょ、素敵な奥さんで うらやましいのか?やきもちか?(笑)
    私が男だとして、親友らでは ないんだろうなあ・・
    女として (笑)のセンスがないとか この男らに言われたところでも
    旦那を含め 総まとめで いらん、やつらw ごちそうなんて絶対しない。
    ジジイになっても こんなことされそうで ばかばかしい。
    (と 本気のコメントでした(笑))

    返信削除
    返信
    1. >あじさいさん
      女性陣の厳しい指摘に、タジタジです^_^;
      想定していたのは医学部時代の悪乗り仲間なんですが、ここまでのことはしませんでしたもんねぇさすがに。

      削除

コメントへの返信を一時中止しています。
一部エントリでコメント欄に素晴らしいご意見をいただいており、閲覧者の参考にもなると思われるため、コメント欄そのものは残しております。
また、いただいたコメントはすべて読んでおります。