祖父の影響で、幼少時の月曜8時といえば『水戸黄門』だった。まだストーリーが分からない頃には、単にチャンバラが格好良くて、袴や二本差し、そしてチョンマゲに憧れたものである。今や天然チョンマゲになりつつあるというのに……。
ある程度ストーリーが分かるようになると、今度は勧善懲悪にスカッとするようになった。『水戸黄門』は小学校の高学年まで観ていたが、その頃は『必殺仕事人』がローカルで再放送されていて、黄門様やスケさん、カクさんのような穏やか懲らしめより、ハードな仕置きをするダーク・ヒーローたちに心酔するようになっていった。
冲方丁は「うぶかたとう」と読む。少し前、妻に対する暴力で話題になっていた。当時はどんな小説を書く人か知らなかったが、たまたま目についた本書を読んでみて痺れてしまった。冒頭からグイグイ引っ張られ、気がつけば読了という素晴らしい読書体験だった。テレビで知っている『水戸黄門』とは違って、ギラギラとした殺気を身にまとった偉丈夫として描かれる光圀に、戸惑うどころか、むしろ非常に強く魅力を感じた。
テレビの水戸黄門と必殺仕事人を足して二で割ったような、優しさと険しさを兼ね備えた黄門様に出会える一冊。
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