江戸時代、薩摩藩から徹底的に搾取された奄美大島を舞台にした物語。
奄美の人たちはサトウキビを作ることを強制され、税として砂糖を納めなければならなかった。足りない分は、人から高利で砂糖を借りて上納する。貸し付けられた分を返せないと、ヤンチュという身分となって、貸し主の家の労働力となる。返済すればヤンチュからは抜け出せるのだが、もとが高利なので、抜け出せるものなんていない。そして、ヤンチュの子どもは「ヒザ」と呼ばれ、この子らは親が借金を返すか返さないかに関わりなく、死ぬまでその家の労働力、持ち物、財産として扱われることになる。
主人公は、ヒザであるフィエクサで、ヤンチュで血のつながらない妹サネンと二人で厳しい生活を生き延びる姿を描きつつ、兄妹としての愛情だけでなく、二人の男女としての恋情も、痛みや切なさを伴って描写してある。
全体を通して、搾取に喘ぐ人々の重苦しさが漂う。選考委員の椎名誠は、
「これだけ緻密に奄美を描いた小説は初めて」
と評したらしい。理不尽すぎる身分制度の中にあって、主人公らは逞しく、人を思いやる気持ちを失わない。そんな懸命な生き方に胸を打たれる。決して明るい話ではないが、日本ファンタジーノベル大賞の大賞を受賞したのも納得の作品だった。
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