2016年9月27日

麻疹、デング、エボラなど、感染症アウトブレイクや、その予防・監視についてよく分かる! 『パンデミック新時代 人類の進化とウイルスの謎に迫る』

トキソプラズマという寄生性の原虫がいる。これは一部では「ゾンビ虫」と言われているらしい。トキソプラズマをテーマにしたドキュメンタリを観たことがあるが、フランスではこの原虫に感染している人が多いそうだ。そして、この原虫に感染すると性格が変わり、特に「危険なことを好むようになる」のだとか。

このトキソプラズマはネコを終宿主とする。つまり、トキソプラズマにとってネコこそが、目指すべき理想郷なわけである。ところが、トキソプラズマは人間にも家畜にも、そしてネズミにも感染する。そして、ネズミに感染した場合、ネズミはネコを怖がらなくなる。それどころか、ネコの尿のにおいに引き寄せられるようになるそうだ。これは、トキソプラズマがネズミの行動を変えていると考えられている。

そこでふと思う。そういえば、ネコを何十匹も飼うような人が時々いるが、ああいう人たちも、もしかすると……。そう、実際に「クレイジー・キャット症候群」なんて別名もあるほどネコ好きな人たちは、トキソプラズマに感染しているのではないかという説があるそうだ。感染すると、ネコの尿のにおいに鈍感になるどころか、ネズミと同じで引き寄せられるようになるらしい。


本書では、このような微生物、特にウイルスの話をメインに、感染症、アウトブレイク、パンデミックについて解説してある。

興味深かったのは、著者が関わっている感染症監視システムで、「デジタル疫学」とも呼ばれる分野の話。ツイッターやフェイスブックといったSNSを利用して、感染症アウトブレイクを監視するのもその一つだ。「咳」「発熱」「痒み」などのキーワードを対象にチェックし、そういう語句がたくさん出ている場所、グループを重点的に観察することで、アウトブレイクを未然に察知しようという試みらしい。実際、グーグルの検索語句と検索者の地域などを解析したところ、かなり高い精度でインフルエンザの流行地域と一致したようだ。

記述は全体的に平易で、特に専門的で難しいという部分はなかった。これを書いている平成28年9月7日時点の日本では麻疹の流行危機が話題になっている。この機会に、一流の学者による一般向けの本書を読んでみるのはどうだろうか。

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