2016年11月8日
二軍はプロ野球選手ではない! 一軍に養われているに過ぎないのだ!! 『二軍』
本書の中に、『二軍は決して「プロ野球選手」ではない。一軍選手の扶養家族のようなものである』という厳しい言葉がある。一軍選手が活躍することで観客からの収入が増え、二軍選手はその金で「食わせてもらっている」ということだ。一軍が華やかであればあるほど、二軍という影の部分は濃くなる。そこから這い上がらない限り、いつまでも扶養家族のままである。
実力さえあれば一軍に上がれるのかというと、現実はそう単純でもないようだ。というのも「実力」というのはあくまでも相対的なもので、人材に乏しいA球団では一軍レベルでも、人材豊富なB球団なら一軍半という人もいるからだ。運良くA球団にトレードしてもらえれば一軍として活躍できるのかもしれないが、B球団としては二軍選手がケガで休場したときのために、一軍半くらいの選手は確保しておきたい。そういうチーム事情から、二軍でくすぶり続ける人もいるようだ。
また、監督やコーチへの自己アピールも大切だ。監督やコーチも人間である以上、起用する選手に対する好き嫌い、合う合わないといったことは少なからず影響する。私的感情を一切まじえずに「チームを一つにまとめる」というのは、おそらく不可能である。それに、こうした好みを徹底的に排除できるのが「名将」かというと、きっとそういうわけでもない。たとえ実力主義に徹しているように見えていても、実際のところはそうではないはずだ。そう考えると、「実力主義に徹しているように見せるのが上手い」というのは、「名将」の条件なのかもしれない。
二軍は、一軍で活躍するための選手を鍛えて用意する場であるが、それと同時にイースタン・リーグとウエスタン・リーグに分かれて試合をしているチームでもある。通常、実力のある選手は二軍監督が一軍に推薦するのだが、二軍チームとしてもリーグ戦で好成績をおさめたい。だから、「良い選手を二軍チームに留めておきたい」という心理から、つい推薦を遅らせてしまう二軍監督もいるらしい。「鶏口となるも牛後となるなかれ」とは言うものの、一軍で並みの選手として生きるより、二軍の大黒柱として重宝されるほうが良いなんてことは絶対にない。なぜなら、「二軍は一軍に養われているにすぎないから」である。
そんな二軍について、選手らを取材したルポ。選手の置かれたシビアな現実が、著者の温かい視線でもって描かれている一冊であった。
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