アメリカの医学部を卒業し、アメリカで勤務する日本人医師、それも「てんかん専門医」の診療エッセイである。
これまで医療エッセイは数多く読んできたが、「てんかん臨床」を主題にしたエッセイは初めてだ。もしかすると、出版されている中で「てんかん臨床エッセイ」と呼べるのは本書だけかもしれない。ほぼすべての章が、患者や家族とのやりとりをはじめとした臨床エピソードで成り立っている。
ある女性は、てんかんの男性を長らく献身的に支えてきたのに、彼がてんかん手術を受けて発作が改善すると、なぜか家を出て行ってしまう。この話を読んで、日本人もアメリカ人も「こころの機微」は同じだなぁとしみじみ。しかし、このあたりのこころの動きについて本書では触れられないままであった。というより、むしろ著者の感想は「なんでだろうねぇ」というものだった。
てんかん発作の専門用語や薬の名前はほとんど出てこないので、一般の人が読んでも難しいところはほとんどなく面白いと思う。医師としては、著者のてんかん患者に対する愛情に好感が持てて、自らの診療を見直すきっかけにもなった。「てんかん臨床エッセイ」に興味のある方にはぜひともお勧めである。
類似の本で、お勧めのものをご存じの方は教えてください。
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