2017年5月4日

躁うつ病の治療薬リチウムによる中毒、糖尿病治療薬フォシーガによる脱水

これまで定期的にリチウムの血中濃度は測定していて、特に問題はなかったのに、ある日リチウム中毒で運ばれてきた人がいた。過量服薬したわけでもない。予想される経過はおよそ以下のとおり。

数日前、おそらく何らかの軽微な感染症にかかって食事と飲水が不足した。その後、

脱水 → 軽度の腎不全 → 血中のリチウム濃度上昇 → リチウムの副作用で食思不振が悪化 → 脱水悪化 → 以下、負の連鎖

さらに、糖尿病治療薬であるフォシーガも内服していたので、脱水に拍車がかかったと予想される。シックデイ(体調不良で食事がとれない日)でも、糖尿病治療薬を含めたすべての薬を律儀に内服していたのだ。

このフォシーガという薬は、内服すると尿中に糖がどんどん排出される。どれくらいかというと、1日で約200kcalぶん。このおかげで少しずつだが体重が減る。糖尿病治療とダイエットの一石二鳥で、夢のような薬に聞こえるが、リスクもある。

まず、尿中の糖が増えるので、糖を好む微生物による尿路感染症をきたしやすくなる。それから、利尿作用もあるので、まめに水分補給しないと脱水になる(Aさんのように)。脱水から、脳梗塞や心筋梗塞を起こす恐れもある。

そういうわけで、転勤していった敬愛する内科医K先生いわく、
「こうしたリスク説明や飲水指導を重々にしたうえで、理解力と実行力のある人にしか勧められない」
とのこと。

この人もこうした説明は受けているはずだが、診察室での生活指導は、重々にやったつもりでもこういう結果になることがままある。

さて、リチウム中毒に話を戻そう。

リチウムには解毒剤がない。重症の場合には透析が必要になるが、そこまででもない時には、ひたすら輸液してリチウムを尿中に排出させるしかない。この時、利尿薬としてラシックスを用いるとリチウムの再吸収を促すので禁忌である。大事なことなので、もう一回。

リチウム中毒に対して、ラシックスは禁忌。

これは今回いい勉強になった。


※以上、医療従事者でない人にも、なるべく分かるように書いたつもり。


「リチウム中毒にラシックスは禁忌」は、これを読んで知りました。

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