2017年7月7日

正常と異常の境目にある「夕暮れ症候群」

時間を報せる地区放送が7時、12時、17時45分に流れる。我が家の飼い犬である太郎は、このうち夕方の放送にだけ反応して遠吠えする。日中は平気でも、夜が近づくにつれ不安になって、仲間と声をかけあいたい気持ちが高まるのかもしれない。

ふと、患者さんたちの「夕暮れ症候群」に想いを馳せる。

「夕暮れ症候群」とは、特に認知症の人に多い現象で、夕方になるとソワソワして落ち着かなくなり、ちょっとしたことで声を荒げたり、自宅にいるのに「家に帰る」と言い出したりすることだ。こうした「夕暮れ症候群」は、症状だけを見ると異常である。こういう「通常はないはずのものがある」異常というのは目につきやすい。

しかし、本質的には動物にもある「暗闇を恐れる本能」だろうし、暗闇を恐れることは自然なことである。「夕暮れ症候群」は、その人の心身で「時間感覚」がある程度保たれていて、つまり時間感覚に関しては正常であるということを示しているのかもしれない。

ちょっと与太話にはなるが、学生や会社員などで日中は一人でいても平気なのに、夜が近づくにつれて人恋しくなって、つい、
「飲みに行こう」
なんて声をかけてしまう人というのは、認知症になったら「夕暮れ症候群」で周囲の手を焼くタイプなのかも……。

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