2018年1月19日

妄想を、否定しないで修正できるか

「薬を飲みたくないんです」
「どうしてですか?」
「自分の霊感は本物なのに、薬を飲むと霊感が弱められるから」
「なるほど。ところで、霊感で得したことはありますか?」
「いいえ」
「困ったことは?」
「あります」
「それなら、霊感が弱まるほうが良いのでは?」
「そうですね(笑)」

妄想を否定せず、内服継続に結びつけた会話の一例である。

たとえば「家族が死んだ」という妄想のある入院患者に、何度「生きていますよ」と訂正してもなかなか納得してくれないとする。この訂正は、相手からすると「否定」であり、どうにも具合が悪い。

そこで、
「もし亡くなったと連絡があれば、あなたには真っ先にお知らせしますね」
という返しかたをしてみる。こうすれば、相手を否定する言葉の「圧力」は弱まる。それに、もしこれに対する相手の返事が「お願いします」であれば、「家族が死んだ」という妄想は少し緩和・修正されたようなものである。

こんなふうにして、特に精神科医は、診療ツールとしての言葉をひたすら工夫してみなくてはならない。

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