2018年7月3日

「戦争」についてだけでなく、一般の人にも役立つ知識が多く、子育てにも夫婦関係にも応用できる考えかたが散りばめられていて、ぜひとも読んでみて欲しい一冊 『「戦争」の心理学 人間における戦闘のメカニズム』 


前著『戦争における「人殺し」の心理学』がとても面白かったので、続編ともいえる本書を読んでみた。やはり非常に良い本で、兵士や警察官に限らず、精神科医の仕事にも活かせる内容であった。

精神科病棟は戦場ではないけれど、スタッフが患者から暴行を受けることは珍しくない。そういうとき、チームリーダーとしてどう対応すべきなのか、そして、その後にチームとしてどういうことをするべきなのか。

アメリカの兵士や警察官は「危機的事件後報告会」というミーティングを行なうそうだ。ここに関係者が集まって事件について語り合うことで、互いに欠けている記憶を補い合う。事件現場ではみんな興奮しており、それぞれで見えているもの、覚えているものが違っている。そして、各自がみな「自分のせいだ」と思いこんでいることが多い。記憶を補い合うことで、「みんなの責任だ」「いや、誰のせいでもなかったのではないか」と互いに確認し、傷ついた仲間どうしで支え合う。本書ではこれを、「苦しみの共有は、苦しみの割り算だ」と表現している。

また、誰かが殺されたり被災したりしたのを目撃した人は、

「あれが自分ではなくて良かった……」

とホッとする。これは真っ先に起こる正常な感情であり、その後、その「ホッとした」ことに自己嫌悪や罪悪感を抱く。だから、「ホッとするのが当たり前」だと伝えるだけで、目撃者の精神的な苦痛は大いに緩和される。

これ以外でも、一般の人に役に立つ知識が多く、子育てにも夫婦関係にも応用できる考えかたが散りばめられていた。『戦争における「人殺し」の心理学』とあわせて、ぜひとも読んでみて欲しい一冊。

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