2018年8月10日

ベトコンを殺すわけじゃない! 死んだヤツがベトコンなんだ!! 『動くものはすべて殺せ アメリカ兵はベトナムで何をしたか』


少し前に読んだ『プラトーン・リーダー』が、実際にベトナムで戦った士官による直接的で内省的な本で非常に好感がもてた。その流れで、中堅ジャーナリストによる間接的で内省的な本書を読むことにした。

アメリカ軍兵士による数々の残虐行為が列記され、読んでいて胸糞が悪くなった。当時の米軍兵士(もしかすると現在も一部は?)は、ベトナム人を劣等民族と考え、「人間以下の存在」として、「ほぼ全員が軽侮の念」をもっていたという。その一例として、挙げられているのがこういう記録だ。
パイロットは、自転車に乗ったふたりの女性を見つけて急降下し、ヘリコプターの着陸脚をぶつけて彼女たちを死亡させた。捜査がおこなわれることになり、操縦士は一時的に任務を外されて、リヴィングストンが医師としての立場からその男と面談をした。操縦士は、女性たちを殺してしまったことについては、まったく良心の呵責を感じておらず、捜査期間中の給料がもらえないことだけを悔いていたという。
生きているベトナム人を人間以下の存在と考えているのだから、その死体に敬意を払わないのも当然である。「米兵のなかにはベトナム人の頭部を保管したり売ったり」する者も、耳を切り落としてネックレスにする者も、頭の皮、ペニス、鼻、乳首、歯、指をコレクションする者もいた。

当時、南ベトナムの人口は1900万人いたが、入念な調査によって、民間人の死亡者は200万人くらいいたのではないかと考えられている。では、彼らがどのように死んでいったのか、いや、殺されていったのかを見ていこう。
ある軍曹は、ひとりの少年を射殺したあと、武器を持っていなかったその子の兄の頭に至近距離から銃弾を撃ち込んだことを明かした。
「武器を持たない身元不明の男性二名――推定年齢二、三歳と七、八歳――をとらえ……とくに理由もなく殺害した」
「フロイドが子供のひとりを撃ったと思います。片方の脚がちぎれて――肉だけでぶら下がっていました」
彼らが赤ちゃんを抱いた女性を殺したあと、即座に子供に銃を向けたと証言した。「その赤ん坊を蜂の巣にしたんです」
B中隊の隊員たちは、武器を持たない少年に出会った。(中略)「すると中尉が、こいつを殺したい者、撃ち殺したい者はいるかと尋ねたのです」(中略)「少年の腹を蹴り、衛生兵がその子を岩陰につれていきました。銃声が続けざまに聞こえて、やがてオートマチックピストルの弾倉が完全に空になったのがわかりました」その子供は“戦闘により殺害”された敵に数えられた。
ある女性の片方の耳を切り落とし、その目の前で彼女の赤ちゃんを地面にたたきつけ、踏みつぶしたこと。
「その小さな子は(三メートルほど離れた)近くにいました。彼はそれを四十五口径で撃ったんですが、外しました。おれたちは笑いました。そいつは一メートルほど前に出て撃ちましたが、また外した。おれたちはまた笑いました。すると今度はすぐそばまで行って頭の上から弾をぶち込んだんです」
民間人は「戦闘に巻き込まれて死亡する」のではなく、明らかに民間人と分かっていながら殺されるのである。それをアメリカ軍の兵士たちは、「ベトコンを殺すわけじゃない。死んだヤツがベトコンなんだ」というような言葉で表現した。
わたしは、少年たちが米軍のトラックに轢かれたこと、そしてこの種のゲームが流行っているらしいことを知った。つまり、兵士たちが町なかで車を走らせ、誰が子供を撥ねることができるか、賭けをしていたというのだ。この遊戯は、“グーク・ホッケー”という不快きわまる名前で呼ばれていた。 ※グークとは米兵によるベトナム人の蔑称。
性的暴行も無数に行なわれた。その一例。
第一騎兵師団の兵士たちは、恥知らずにも、ファン・チ・マオという名の若いベトナム人女性を、性奴隷にする目的で誘拐した。(中略)この任務に先立ち、彼の所属していた巡視隊の指揮官がはっきりとこう言ったそうだ。「われわれは、はめはめ、つまり性行為をするためにこの女を捕らえ、五日後に殺害する」その軍曹は自分の言葉通りにした。女性は誘拐されて、巡視隊のメンバーのうち四名に代わる代わる強姦され、翌日に殺された。
他にもある。
銃で撃たれて怪我をしていたベトナム人女性を発見した。彼女は重傷を負っていて、水をくださいと言った。ところが水は与えられず、その女性は服を引き裂かれた。それから、両方の乳房を刃物で刺され、両脚を大きく広げられて、ある掘削用具――具体的には小型のシャベル――の柄を膣に突っ込まれたという。
多くの女性が強姦され、ソドミーを強いられ、手足を切断され、ナイフや銃剣でヴァギナを切り裂かれた。ある女性はライフルの銃身を膣に差し込まれ、銃弾を撃ち込まれて死亡した。
拷問も無数に行なわれたが、拷問者の考えがよく分かる記述がある。
男たちは、おまえらが無罪なら有罪になるまで殴ってやる、有罪なら悔い改めるまでぶちのめすと言いました。
驚くべきは、こうしたことが決して一部の部隊、限られた兵士による蛮行というわけではなく、どこの部隊でも多くの兵士が手を染めていたということ。ここに引用したものはごく一部であり、あまりにも多かったために、読んでいるうちにこちらの脳がマヒしそうなほどであった。

にわかには信じられないような話ばかりだが、本書は優れた調査報道に贈られるライデナワー賞を受賞したとのこと。派手なハリウッド映画ではなかなか描かれない黒い歴史が克明に記録された、後世に残すべき名著だろう。

ちなみに、映画で米軍による蛮行を描いたものは皆無ではなく、マイケル・J・フォックス主演の『カジュアリティーズ』が記憶に残っている。原作は『戦争の犠牲者たち―ベトナム192高地虐殺事件』

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