2012年1月12日

入試問題が“的中”するとはどういうことか

普段、あまり真剣に人のブログを読むことはない。まぁたいていの人がそうだろうけれど。だが、これは非常に読み応えのある素晴らしいブログで、ほぼきちんと読んだ。医学部や精神科領域に進みたいと思いながら、このブログをつらつら眺めている人がいたら、ぜひとも以下のブログを読んでみることをお勧めする。なにか一つだけでも、勉強のヒントになるかもしれない。

入試問題が“的中”するとはどういうことか
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/matsubara/201201/523106.html


成人式と並ぶほどの国民行事となったセンター試験。受験生にとっては、いよいよ本格的な入試シーズンの到来です。夜遅くまで勉強していると、眠気のせいか、時々「今お前がやっているこの問題が、そっくりそのまま入試に出るよ…」という魔法のようなささやきが聞こえてくることがあります。自分だけが受験で苦労していると思いがちな、一人ぼっちの受験生にしてみれば、何だか神様が自分だけに教えてくれたご褒美だと錯覚してしまいます。

「この的中は、偶然ではない、必然だ」
 ところで、問題的中とは何でしょうか―。かつてある大手予備校の模試の国語問題がそっくりセンター試験に出て大騒ぎになったことがありました。予備校側が、プロパガンダもあってそのことをマスコミで大いに喧伝したものですから、出題した国語の教師は一躍全国区的な有名人となりました。

その先生曰く、「英語、国語の大学入試問題は大体、前年の6月頃から作成に入る。だから6月時点で、国語なら刊行されたばかりの評論文から、英語ならその頃発表されてまだ邦訳がなされていない段階での英文から出題される。私はそれを踏まえて、同時期に刊行された書物を一通り読み、入試で課すにふさわしい部分をチョイスし、センター問題にふさわしい設問を作った。この的中は、だから、偶然ではない、必然だ」。

この先生の言を信じるなら、英語、国語の問題的中とは、まず出典を的中させることと、受験のプロが本番入試にふさわしい設問を作り得たかで決まるといえます。ちなみに、この大手予備校の講師採用の基準は、「生徒を沸かせる、惹きつける授業ができるか」ではなく、「模試、テキストをきっちり作れるか」だということです。

数学や理科においては、問題が的中するといっても、一字一句、数字や記号も全く同じということは、まずあり得ません。従って、同じ予備校に通い、同じテキストを使って勉強して、同じ大学を受けても、ある受験生A君は「予備校でやった問題が出た」と言い、別の受験生B君は「見たこともない問題ばかりだった」と言います。これは一体何を意味するのでしょうか。

合否を決めるのはrecognize/identifyの能力
 「分かる」という日本語を英語に訳すとき、場面によって様々な動詞があることを受験生は教わります。「分かっている、知っている」という状態動詞ならknow。「理解する」というニュアンスならunderstand。「これまで眼前にあったのに気づかなかった、今それに気づく」ならrealize。「記憶にあるものと眼前にあるものが一致する、認識する」ならrecognizeもしくはidentifyです。入試問題が的中したという件について言えば、くだんのA君は、recognize/identifyでき、B君は、recognize/identifyできなかったことになります。

recognize/identifyは、例えば、同窓会で20年ぶりに会った旧友の顔かたちがすっかり変わっていても、その旧友が「誰であるかが“分かる”」とか、交番に貼ってある指名手配犯の写真と同じ顔をした人物を見かけて「あ、この人だ、と“分かる”」場合に使います。ただし、後者が前者ほど頻繁に起こるわけではないことは、10年以上もずっと同じ指名手配犯の写真が貼られ続けていることからも明らかです。一枚の写真からでは、その人の他の表情までrecognize/identifyできないのでしょう。

これを受験生に当てはめてみると、A君もB君も元の問題をどちらも見たことはある。ただし、A君は何度も繰り返し見たり類題を演習したりしていたので記号や数字が変わってもrecognize/identifyできるが、B君は、recognize/identifyできるほど見たり演習をしたりはしなかったから、少しずらされただけでもrecognize/identifyできなかった、すなわち初めて見る問題に出くわした、ということになります。

6浪のH君が合格できたワケ
 昨年6浪の末に私大医学部医学科に合格したH君は、高校卒業後3年間、私が主宰する進学塾ビッグバンに通いました。その3年間というもの、教えても教えても、すぐ右から左に抜けていく。一体この子の頭はどうなっているんだろうと、どの教科の先生も嘆いていました。実際、その3年間は一次すら受かりませんでした。経済的理由もあって、その後の2年間は自宅浪人を基本として個別指導を専門とする塾に通っていたようです。それでもらちが明かず、6浪目にしてまたビッグバンに戻ってきました。すると今度は、最初から上のクラスに入り、まるで3年前とは別人のようにのみ込みが良くなっており、どの教科も次から次へと記憶が蓄積していったようです。

合格通知が届いた翌日に、彼はビッグバンに来てこう言いました。「この1年間でやった問題ばかりが出たんです」と。でも実際は、これまでの入試でも、予備校でやっていた問題が多く出ていたのです。つまり、recognize/identifyする能力が備わっていなかったのが、6年目にしてやっと備わったということのようでした。そこで私たちは改めて知りました。「1を聞いて10を知る」という言葉があるけれど、それには個人差があり、人によって、たちどころに10を知る人と、6年かけてやっと知る人がいるということを。そして、すぐ10を知るかどうかでもって、頭の良し悪しを決めつけることが必ずしも妥当ではないということを。

よく、本番入試を前に、「新しいことをやる必要はない。これまでやったことをもう一度反復して確認しなさい」と言われるのはそのためです。本番の限られた時間内でこれまでやったことをrecognize/identifyすることができるかどうかで合否が決まります。受験生の皆さん、頑張ってください。

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