2012年7月11日

いじめを減らすために

いじめを苦にしての自殺が裁判となった場合、遺族から「真実が知りたい」「真実を知ることができず残念」といったコメントが発表されることがある。これは本当のところは、遺族側に「真実は○○だ」という気持ちがあって、それを裁判で認めて欲しい、ということだと思う。そこで真実とはなにか、という問題になるのだが、これは亡くなった子にしか分からない。「いや、いじめた側だって分かるはずだ」というのは、いじめを経験したことがない人の妄言だ。

俺はいじめを受けたことがあるが、いじめたことはない。そう思っているのだが、一部の友人からは「あの頃のお前はAをいじめていた」と言われることがある。つまり、俺はいじめだとは思っておらず、それこそ「じゃれていた」「からかっていた」というのに近い。ところが、周囲からはいじめだと受け取られていた。それなら、ましてAからしてみたら完全に「いじめ」だっただろう。幸いAは自殺しなかったし、今もし会ったとしたら当時のことを聞くことも可能だ。俺をいじめた人たちも、たぶん俺と同じような感覚があるんじゃないだろうか。

いじめは良いか悪いかと考えたら、それはもちろん悪いに決まっている。ないほうが良いのは当然だ。ただ、いじめをなくすためにどうしたら良いのかと考える時には、上記したような「いじめる側の認識」にも光を当てないと、きっとうまくいかない。

「見ているだけでもいじめに参加しているのと同じです」
これは確かにそうかもしれないが、これだけだと不十分なのだ。
「彼らは、自分たちがいじめていると気づいていないかもしれません。直接に止めなくても良いけれど、何らかの手段で、彼らに気づかせてあげてください。いじめられている子のためだけでなく、彼らのためにも」
こういったメッセージも送らなければいけないし、気づくだけで変わることは案外多いと思う。

もし俺がAと一緒だったころに、同級生から「お前がやっているのはいじめだ」と指摘されたら、かなりショックを受けただろう。「止めはしないけれど、もし続けるなら、“いじめ”という認識は持っておいた方が良いぞ」とまで付け加えられたら、もうAには関わらないようにしようとさえ思ったかもしれない。中高生にそこまで期待するのはちょっと難しいけれど……。

<関連>
いじめ→自殺の裁判に思う (精神科医の本音日記)

2 件のコメント:

  1. Ciao Willwayさん
    私もいじめられたことありますよ
    いじめられてる子をかばったら、次の日その子の場所にわたしがいた...苦笑

    でもね―私らの頃のいじめと今のいじめとでは陰湿さが違う気がするのです
    だから、彼らは認識していない、ってのは、完璧には当てはまらないと思うのです
    百歩ゆずって認識していなかったとしたら、それこそ社会問題ですよ

    万引きを強要する、自殺の練習をさせる、死ねを毎日罵倒する
    そんなこと私の時代にはなかったですもん
    こうねぇ大人顔負けの陰湿さ、ある種の本気を感じるのです
    いくら子供でも、これは犯罪だと私は思いますし
    彼らは、いじめてるってこと充分に認識してると思うのです

    これもまた、元をただせば、教育の問題ですね

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    1. >junkoさん
      俺は最近問題になっている自殺問題は、日本全国であっているイジメの中でも極端な例だと思っています。もちろん、同様のことがあちこちであっているとは思いますが。

      大半は、自殺にまでは至らないけれど心に傷を残し、そして加害者はそのことに気づいていないのではないかと思います。そういうイジメを少しでも減らすには、やはり加害者の側に気づかせることが大切かなと考えました。

      今回の自殺と、それに伴う過熱報道によって、今の日本のイジメがやたらと過激かつ陰湿に感じられますが、少なくとも30年前、俺が小学校のころにも、身近で同様のイジメと自殺未遂があっていました。報道はされませんでしたが。

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