2013年11月14日

チェロを愛する人たちに 『ハルモニア』

「チェロはね、人間の声にもっとも近い楽器なんだよ」
俺にオーディオの初歩の初歩を教えてくださったM先生の言葉である。俺はチェロの音色が好きで、ヨーヨー・マやジャクリーヌ・デュ・プレをはじめ色々なチェロ奏者のCDを持っている。でもなんだかんだで一番聞きやすいのはヨーヨー・マで、
「音楽好きだと言いつつも所詮お前の耳はそのレベルなのだ」
と言われそうでもある。ヨーヨー・マに関して、同じくM先生は、
「彼はね、悪魔に魂を売った男と言われているんだよ」
と仰っていた。これには二つの意味があるそうだ。一つはクラシックを大衆音楽にしてしまった異端児・裏切り者という意味で、もう一つは「悪魔と取り引きしたかのような卓越した技術」という意味だ。

悪魔に魂を売った演奏家として有名(?)なのは、18世紀のヴァイオリニストであるパガニーニだ。あまりに凄い演奏技術のため、悪魔と契約したと噂されたのだ。一説では、彼はマルファン症候群であり、その病気ゆえに指が人より長くバイオリンの演奏に利したそうだ。ちなみに、このパガニーニの演奏を聴いて、まるでワンピースのルフィのごとく、「俺はピアノでパガニーニになる!」と燃え上がったのがラ・カンパネラで有名なフランツ・リストである。

ハルモニア
本書は、最初から最後までチェロだ。ただし、非現実的なので一生懸命にチェロに取り組んでいる人からすると、「そんなバカな……」という部分があちこちにあると思う。それでも俺は、この本を読んで改めてチェロが好きになった。子どもに習わせたいくらいなのだが、その道は狭く険しい荊の道で、しかもその先には決して華やかな舞台だけがあるわけではないということもたくさん見聞きしたので、ヨーヨー・マを聴いて浸るくらいでやめておこうと思っている。

自宅でこの本を読みながら流れていたのが、ヨーヨー・マの『無伴奏チェロ組曲』であったことは言うまでもない。

無伴奏チェロ組曲

残念ながら蔵書にするほどではないため、図書館寄贈。

2 件のコメント:

  1. どっかのオケのコンサートで、
    ヨーヨー・マのコンチェルトを聞いたことがあります。
    その後のシンフォニーで、こっそりチェロパートに混じって演奏していた
    お茶目な方でしたw

    マルファン症候群って言えば、
    ラフマニノフもマルファン症候群だったのでは、と言われてますね。
    だから、普通の人では引けない和音も易々と弾けたのでは、と。
    病跡学というのも、なかなか面白い分野だと思います。

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    1. >匿名2013年11月15日 9:28さん
      ヨーヨー・マ、お茶目ですね! 素敵です。

      病跡学、面白そうだなぁと思います。学会もありますもんね。

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