2016年12月26日

いろいろなことを考えさせられる名著 『日本はなぜ敗れるのか 敗因21ヵ条 』

福祉業界が金と人の不足に喘いでいるのは常識だと思っていたが、そんな福祉業界の重鎮といわれるような人が、
「人手不足は妄想である。人手が足りると気が緩み、それが事故につながる」
という発言をしていたと知って驚いた。


本書は『虜人日記』を縦軸に、著者である山本七平の経験や考察を横軸にして、戦前・戦中・戦後の日本や日本軍について語られる。『虜人日記』では「日本の敗因21ヵ条」が示されており、そのうちの第一が、
精兵主義の軍隊に精兵がいなかった事。然るに作戦その他で兵に要求される事は、総て精兵でなければできない仕事ばかりだった。武器も与えずに。米国は物量に物言わせ、未訓練兵でもできる作戦をやってきた。
である。

ここで、上述した福祉の状況が思い出された。偉い人の唱える、
「人手不足であるからこそ、士気が高まり、各人の能力も鍛えられる。自ずと福祉向上につながる」
という発想は、戦時の日本軍とまったく同じではなかろうか。

福祉業界が人手不足ということは、新人も含めた各スタッフの負担は大きいということだ。そこで人を集めるべく、各地で「介護士講習会」が開かれている。しかし、ベテランでもこなすのがやっとの状況なので、付け焼き刃的な講習を受けた人が期待や志しを胸に就職しても、現場での心身の負荷に耐えられず、早々に立ち去ることも多い。そして、それを補うべく、また講習会……。

第二次大戦において、動員した民間人を次々と東南アジアに送り出しては使い捨てにした日本軍的な思考から、日本はなかなか抜け出せないでいるようだ。

こうしたことを様々に考えさせられる、評判に違わぬ良書であった。

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