2017年11月8日

統合失調症の患者は何を言っているか分からないから難しい?

先日、内科医である院長が酒席で、
「統合失調症の患者さんは何を言っているか分からないことがあるから、精神科ってのは難しいなと思うよ」
と言っていた。これは院長なりの精神科医に対する労いの言葉であり、精神科患者に対する他意はないはずだ。ただ聞いていて、「うーん、そうじゃないよなぁ」と思った。

幻聴や妄想について語り続ける患者は、恐らく世間で思われているほどには多くない。医学生や研修医を外来に同席させて診察を済ませ、さっきの人は統合失調症だよと教えると、
「え!? あの人も!? すごく普通だと思いました……。教科書でつかんだイメージと全然違いますね……」
という反応が多い。自分が医学生・研修医だったときも同様の感想を抱いたものだ。

連合弛緩や支離滅裂といったところまで状態が進むと、言っている意味はほとんど分からなくなる。だが、彼らがなんだか困っているということは伝わってくる。考えてみたら内科でも、口に出して「頭が痛い」と言う人から、脳卒中で意識消失している人まで幅がある。それでも内科医にとっては「今やるべきこと」「今やってはいけないこと」というのが見えている。精神科も同じだ。幻聴や妄想が激しかろうが、連合弛緩や支離滅裂に陥っていようが、やるべきこと、やるべきでないことは、おおよそ分かるものである。

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