まずはこの動画を見て、30秒足らずの間に白いチームが何回パスをするか正確に数をカウントしてみて欲しい。さて、一回目で正解に辿りつけるかどうか、あなたの集中力と注意力が試される。
これはバスケットボールとゴリラを使った面白い実験だ。被検者に、白いユニフォームと黒いユニフォームを着たチームのバスケットの試合を見せ、パスの回数を数えてもらう。そして試合後、こう質問される。
「何か変なものを見なかったかい?」
ほとんどの被検者は気づかないが、実はコートの中でゴリラの着ぐるみが動き回っていたのだ。
この実験からも分かるように、人間の認知力には、集中すればするほどこういう落とし穴があるのだ。(似たようなことを、明るすぎる懐中電灯は周囲を暗く見せるでも書いているので参照)
ちなみに、この動画の実験で、
「黒いチームのパスを数えてください」
と指示すると、ゴリラの発見率が上がるということも分かっている。なんとも興味深いと感じるのは俺だけじゃなかろう。
そして、種明かしをされた後に動画を見直すと、いくらパスに集中しようとしてもゴリラが目に入ってしまう。つくづく人間の認知力の奇妙さには驚かされる。
時々、高速道路で事故車から降りて歩いていた人が車にはねられるというニュースを見聞きする。上記ゴリラの実験のように、道路と標識と他の車に集中しすぎると、通常はいるはずのない「歩行者」を認知できなくなる。だから、こういう事故が跡を絶たないのだろう。
本書はユーモラスで「あるある」的なタイトルとは裏腹に、内容は交通に関していろいろな面から考察してある。『影響力の武器』などの本で、経済学と心理学をミックスして『行動経済学』としたように、本書は『行動交通学』といった趣きがある。
それぞれの章ごとのタイトルが秀逸なので掲載しておく。
・私はなぜ高速上の工事区間でぎりぎりまで車線合流しなくなったのか
・どうしてとなりの車線の方がいつも速そうに見えるのか?
・あなたが自分で思っているほど良いドライバーではない理由
・どうしてアリの群れは渋滞しないのか(そして人間はするのか)?
・どうして女性は男性より渋滞を引き起こしやすいのか?
・どうして道路を作れば作るほど交通量が増えるのか?
・危険な道のほうがかえって安全?
翻訳がちょっとぎこちないところがあるし、時どき退屈になってしまう部分もあったが、それなりには楽しめた。そして運転することがちょっとだけ怖くなる、そんな本。
ただ、再読することはないだろうし、家族に勧めるわけでもないので図書館寄贈。
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