2018年1月17日

いつか加害者家族になるかもしれない人、つまり、すべての人に読んでみて欲しい 『加害者家族』


事件・事故を起こした人に対して、ネットでは「死刑にしろ」なんて極端な意見が飛び交う。また「家族も同じ目に遭わせてやれ」といった危険で扇情的な叫びもある。

でも、こう問われたら、どうだろう。
「あなたや、あたなの恋人、配偶者、親兄弟、親戚、親友が、いつ加害者になるとも分からないんですよ。それでもあなたは同じことを言い続けますか?」

つい先日、友人の母が交通死亡事故を起こしたらしい。そう、我々は、被害者になるのと同じくらいの確率で、加害者になる確率もあるのだ。そして、被害者や被害者家族と同じだけの数、加害者家族がいるということだ。

被害者に同情するのは当然だし、被害者家族を守るべきなのも当たり前のことだ。加害者を憎む気持ちも自然だ。だがしかし、加害者の家族を責めてどうなる? 育て方の問題? 確かにそうかもしれない。もっと早くに兆候に気づくべきだった? それもそうだろう。加害者家族が苦悩する姿を加害者が見て苦しむのも、罰の一つ? そういう面もあるかもしれない。それでも確実に言えることは、

「事件・事故を起こしたのは、加害者家族ではなく、加害者本人である」

ということだ。

それでも加害者家族を責める感情は自由だし、口に出して悪態をつくのも良いだろう。だがしかし、加害者家族の名前や住所、勤務先、顔写真などを見つけ出して曝してまわるような権利など誰にもないはずだ。現実には、「我こそは正義なり」といった人たちによって、加害者家族が自殺に追い込まれるケースもあるようだ。

「それもこれも、加害者が事件・事故さえ起こさなけれ良かった話だ」

そう簡単に言えるだろうか。

加害者家族を攻撃する人は「正義の鉄槌を下した」と満足するのかもしれないが、その独善的な考えは、犯罪加害者の思考と紙一重ではなかろうか。いや、怖さで言えば、すでに捕まった加害者よりも、「独善的な仕置き人」のほうがはるかに怖い。

本書は、事件・事故の加害者家族を何人か取材し、さらに国内のデータや海外のケースや対策などを通して、加害者家族とはどういうものかを描いている。薄い新書なので、とことんまで突き詰めるといった感じではないが、考えさせられることの多い本だった。

いつか加害者家族になるかもしれない人、つまり、すべての人に読んでみて欲しい。また、加害者には絶対に読んで欲しい。あなたの起こしたことが、あなたの家族をこんなにも苦しめているのだということを知って欲しい。

2 件のコメント:

  1. こんにちは!いつもフムフム…と拝見させて頂いてます。
    息子の学級の虐めはまさにこれに近いですね。

    「皆と違うお前は異常。」という精神的虐めです。
    同じじゃないお前は悪である、異常者である、
    だからお前がもっと良くなるようにしてあげる。
    という善意の人達100人のパンチです。
    一人一人は純粋に善意でやってるという所が怖いです。

    1つでも他者と違うという烙印を押されると
    魔女裁判のような迫害対象になるのでしょうか。


    以前紹介されていた本「普通がいいという病」に
    通じる物がありますが。親としてはビックリでした。

    自分と立場や価値観の違う人間が居て、
    明日は自分かもしれない。
    理解できなくても、理解しようと努力…も想像もしない事は
    人それぞれだと思いますが、悲しいですね。

    返信削除
    返信
    1. >ゆうさん
      確かに、言われてみたらイジメも100人で1発ずつのパンチですね。傍観者もやはり、「自分が見逃したのは1回だけなのに」くらいの感覚でしょう。それって選挙に行かない人の感覚とも根底で通じているかもしれませんね。

      削除

コメントへの返信を一時中止しています。
一部エントリでコメント欄に素晴らしいご意見をいただいており、閲覧者の参考にもなると思われるため、コメント欄そのものは残しております。
また、いただいたコメントはすべて読んでおります。