2014年12月18日

働かないアリに意義がある

アリの群れの中には仕事をしない個体が必ず2割いて、その2割だけを取り出してみると、やっぱりその中の2割が仕事をしない。

そんな話を聞いたことがないだろうか。その逆もある。つまり、働き者の8割だけを取り出しても、全員が働き者になるわけではなく、その中の8割だけが仕事をする集団になる、といったものだ。

2割、8割といった数字は正確ではないにせよ、確かにアリの世界では働き者と怠け者が必ずいるようだ。ではなぜそういうことが起こるのか。どういう仕組みになっているのか。それを本書が教えてくれる。


働き者の代名詞にもなることがあるアリだが、なんと驚いたことに、実は7割のアリは巣の中にいて何もしていないそうだ(働かないアリは2割どころではない!)。また生まれてから死ぬまで働かないアリもいるのだとか。なぜそんな働かないアリがいるのかということの説明として、『反応閾値モデル』というのがある。

アリには刺激に対する反応閾値(これ以上の刺激があったら反応する)があり、その閾値が個体ごとに少しずつ違う。これを筆者は人間集団と部屋の散らかり方で説明している。きれい好きな人を10人集めれば、ちょっとでもゴミがあったら拾わないと気が済まない人と、少しくらいのホコリなら平気という人がいる。その結果、超キレイ好きな人がサッと部屋を片づけるので、多少のホコリには目をつぶる人たちの出番がない。そんな出番のない人たちを10人集めたら、やっぱりその中でキレイ好きのレベルが違うので、出番のない人たちが出てくる。

アリの世界も同様に、「働かないアリ」というよりは「出番がないアリ」が一定数いるということである。

この話以外にも、アリの群れがエサ場までたどり着く最短経路を見つけ出す方法の話も面白かった。発見者の出したフェロモンを正確に辿るより、道を間違う個体がいるほうが、何往復もするうちに徐々に最短経路に近づいていくのだ。間違える者がいるから正解に近づけるというのは、精神科診療でも活かせる場面がありそうな気がする。

とまぁ、そういうことが書いてある前半は読みやすかったが、遺伝の話なども出てくる後半はちょっと取っつきにくかった。

それでも金を払う価値はある本だと思う。

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