2018年4月24日

一生のうち、カゼに苦しむ期間は合計で5年間!? 『かぜの科学 もっとも身近な病の生態』


一生のうち、鼻づまり、咳、頭痛、喉の痛みといったカゼ症状に苦しむ期間を合計すると、なんと5年間にもなるらしい。しかも、カゼのせいで床につく期間だけでも1年間というから驚きだ。たかがカゼ、されどカゼ。侮るなかれ。カゼ、恐るべし。

本書はそんなカゼについて、サイエンス・ライターである著者が分かりやすく書いたもの。あくまでも一般書であって、専門書ではない。しかも俺は感染症の専門家ではない精神科医なので、内容の真偽については評価できない。内容をまったくの鵜呑みにしてカゼ治療にあたるのも当然アウトだ。ただ、俺が一般人として、自分や家族にあてはめて考えるぶんには許されるだろう。

さて、コロラド大学デンヴァー校の小児科副部長ロットバート医師によると、

「第一次世界大戦時の塹壕以来、病原体がこれほど効率的に共有されている場所は現代の保育施設以外にない」

皮肉な表現だが、先進国においてはかなり真実に近いだろう。そういえば、我が家も長女が幼稚園に行きだしてから、本人、妻、俺という順番でカゼをひくことが増えた。次女、三女が生まれてからは、彼女らにもカゼは伝播している。

本書によると、アメリカ人は合計して年間10億回カゼにかかり、治療に何十億ドルもつかうらしい。また、カゼで病院にかかる外来患者は年間で1億人、欠勤日数は数億日にもなり、経済損失は推定600億ドル以上にのぼるらしい。子どもがカゼで欠席する日数の合計は1億8900万日。すごい数字だ。

ところで我が家では、ほぼ全てのカゼに対して、子どもに薬を使わない。大人は仕事や家事があるので、鎮痛・解熱目的でカロナール(アセトアミノフェン)は飲むが、結婚して以来、夫婦ともに総合感冒薬は飲んだことがない。

カゼ治療についても、本書にかなりあれこれ書いてあるが、結局のところ「有効な治療は明らかでない」という結論である。ただし、子どものカゼについて「総合感冒薬を使わないほうが良い」ことは繰り返し書いてあり、総合感冒薬以外の鎮咳薬などについても勧められてはいない。これには大いに賛成である。

本書の内容とは少しそれるが、実体験を少し。

最近、月1回の全科日直(休日の昼間、子どもから高齢者まで、すべての科の初期診療を行なう)をするようになった。そこで乳児や小児もみるのだが、咳や鼻水や微熱といったカゼ症状に対して、保護者が薬を欲しがることが予想以上に多くて驚いた。子ども自身はケロッとしていて重篤感がなくても、親としては咳や鼻水や微熱が気になるようだ。俺も三人の娘をもつ父なので、心配な気持ちはよく分かる。しかし、子どもは人形ではないのだから、咳も鼻水も微熱も出るものだ。軽微なカゼ症状よりも、不必要な薬を飲ませるほうが有害なことは知っておいて欲しい。また、そういう説明もできる限りやっている。決して「軽症で受診させるな」という話ではない。「せっかく受診したのだから、なにかお薬でも」というお土産感覚で処方箋を求めることは、やめておいたほうが良いということだ。

とても面白い医学系ノンフィクションだったので、多くの人にお勧め!!

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