2019年1月25日

慰霊と鎮魂に生涯を捧げた男の悲喜こもごも 『硫黄島いまだ玉砕せず』


第二次大戦において、硫黄島が激戦地だったということはなんとなく知っている。硫黄島決戦に関する本も読んだことがある。戦死者は、日本兵が1万8千人前後(正確な数は分かっていないようだ)、米兵が6821人。米軍にとっても戦死者が多く、決して易々と陥落させた島ではない。

この激戦の島に大佐として赴任しながらも、米軍の攻撃直前に異動となってしまい、日本軍玉砕の報せを遠い地で知るしかなかった男がいる。彼の名は和智恒蔵。戦後すぐに僧籍に入り、恒阿弥として慰霊と鎮魂、遺骨の収集に全人生を捧げた。

そんな彼の半生や人となりを、彼が残した資料や同士らへのインタビューから描いていくノンフィクション。まったく知らない人の伝記であるにもかかわらず、説明不足や過剰がなく、非常に読みやすかった。絶版であるのが惜しい名著。

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