2013年10月28日

リスク・リテラシーが身につく統計的思考法

さて、問題。日頃から患者に検査を受けさせ結果を説明をしている医師には簡単すぎる?
ある地域で、40歳から50歳までの自覚症状のない女性を調べると、乳癌である確率が0.8%であることが分かっている。また乳癌であれば、検査Aで陽性になる確率は90%である。そして、乳癌でなくても陽性と出る確率は7%である。さて、ある女性の検査結果が陽性と出たとして、この女性が実際に乳癌である確率はどれくらいか?
ここから先を読む前に、大雑把でも当てずっぽうでも良いので、自分なりの答えを用意してみて欲しい。これを数式を用いてサラサラと解ける人もいるだろうが、そんなことをしなくても、考え方をこう変えてみると良い。
ある地域では、1000人の女性のうち8人が乳癌である。この8人が検査Aを受ければ7人が陽性になる。そして、乳癌ではない992人のうち、約70人で検査結果は陽性と出る。では、ある女性の結果が陽性であった場合、この女性が実際に乳癌である確率はどれくらいか?
どうだろう。一気に視界が拡がったんじゃないだろうか。答えは、陽性者77人のうち本当に乳癌である人が7人であるから、約9%となる。

こうやってパーセンテージではなく実際の数で表すのを自然頻度という。これは、検査結果を説明する側である医師に限らず、検査を受ける患者も知っておいて損はないどころか、かなり有意義なものであるはずだ。いや、むしろ知らないで損をしていることが多いかもしれない。

では次の練習問題。
HIV感染に対してリスクの高い行動をとっていない男性(ロー・リスク)において、0.01%がHIVに感染しているとする。このグループの男性が実際にHIVに感染していれば、検査結果が陽性になる確率(感度)は99.9%。感染していなければ、陰性になる確率(特異度)は99.99%。では、ロー・リスクの人が検査を受けて結果が陽性であった場合、ウイルスに感染している確率は何パーセントか?
さぁ、頭を悩ませて無駄な時間を使わずに、さっき学んだ自然頻度を使ってみるんだ。
1万人に1人いる感染者は、ほぼ確実に検査結果が陽性になる。残り9999人の非感染者のうち、1人は陽性になってしまう。ということは、検査結果が陽性になるのは2人、本当に感染しているのは1人。したがって、結果が陽性であっても、本当に感染している確率は50%である。
この検査、100万人が受けたとしたら、感染していないのに陽性となる人(偽陽性)が100人近く出ることになる。かつてアメリカではHIV検査で陽性と告げられて自殺した人たちが何人もいるらしいが、彼らの多くに偽陽性の人が含まれていたのではないだろうか……。そう考えると、検査結果の性質、意味を知らないことは、患者にとって大損であるし、医師にとっては罪作りである。

これを読んで危機感を抱いた医師や患者、その他大勢の人たちは、この本を読むべき。

リスク・リテラシーが身につく統計的思考法―初歩からベイズ推定まで

この知識が1000円以下で手に入るのだから、買わない手はない。

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乳がん検診、若い女性が受けた場合に不利益も

2 件のコメント:

  1. 可能性の話と治療の話。
    がん治療となると、日本は後退国ですから・・・どうでしょうね?

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    1. >匿名2013年10月28日 14:25さん
      がん治療に関してはまったく詳しくないのですが、検査を受ければ良いというものでもないということが今回分かりました。

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