2011年12月17日

瞳を閉じて、鼓膜で、皮膚で

フロアスタンドに明かりを灯し、
お気に入りのジャズを聴きながら、
薄暗い部屋で脱力して過ごす。
酒はなくても構わない。
極上のスピーカーから流れる最上級の音楽。
鼓膜だけじゃなく、皮膚さえも聴覚器官として。
聴くのではなく、感じる。
そして、自然と、瞳は閉ざされる。

あぁ。
これは、つまり、キスなのだ。
音楽との抱擁、そして、キス。
相手の鼓動、息づかい、微妙な動き、体温、感情。
そうしたものを全て残さず感じたいから、瞳を閉じる。
濃厚で、濃密で、エロティックな、キス。

音の唾液が、鼓膜を刺激する。
リズムが、皮膚を愛撫する。
愛しているよ。
そう声をかけることさえもどかしく、
ただひたすらに、音楽と抱き合いキスをする。

キス以上には、進めない。
キス未満には、戻れない。
そんな関係。
頭と体は、熱く、煮えたぎるように、
これ以上、今以上を求めていても、
決して、今より近づくことは叶わない。
いっそ諦めてしまえたら。
そう想いながら、抱擁し、キスをし、
諦めるという言葉が溶けていく。



今、君はボクだけのものだ。

今、ボクは君だけのものだ。

だから、

全てを、

他の人には見せないところまで、

うなじを、乳房を、秘部を、

ボクに、

ボクだけに、さらけだしておくれ。

ボクが全てを受け止めて、ボクが全てを舐めつくしてあげる。



演奏が終わり、ボクたちはそっと体を引き離す。
ボクは、もう一回、もう一回と、
別れぎわにキスをねだるように、
再生ボタンに指を這わせる。
そうして、静かに、夜が更けていく。

4 件のコメント:

  1. すんごい共感してしまいます!!

    ちなみに演奏するっていうのは作曲家へのラブコールですね。
    ねぇ…貴方のことこんなに好きなの。もう好きだなんて伝えられないけど貴方に恋してしまったの。誰よりもあたしが貴方を理解してあげる。誰よりも貴方をあたしが表現してあげる。振り向いてなんて言わないから。永遠に片想いでも構わないから。お願い。今だけはあたしのモノでいて


    ってかんじで弾いております。改めて言葉にするとこっぱずかしいですね。(笑)


    こんなかんじで

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  2. >あっこ
    演奏家はそうなのか、なるほど。
    ちなみに、読書や映画観賞ではそこまで入り込まないんだよなぁ。

    俺の場合、酒がほんのり入って聴く音楽でしか、こういう体験はない。
    人それぞれなのかねぇ。

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  3. 自分もそんなかんじですよ。心酔するのは音楽だけ。
    音楽は自分の世界観を創ることができるけど、映画とかは創られた世界観を見るものだから心酔できないのかも。。

    って昨日撮ったアリエッティを見ながら思ってます。ラピュタに引き続きジブリシリーズの放映でテンション上がり気味だったのに、あんまり面白くなくて眠いです。トトロとかやってくれなあかなぁ…

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  4. >あっこ
    アリエッティは、宮崎駿じゃないんだよね、たしか。
    だから、というわけでもないんだろうけど、物足りなかったなぁ。

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