2012年3月22日

教師生命のかけどころが違う

大阪の小学校の女性教師が、国歌斉唱時に起立しなかったそうだが、「橋下徹市長による急激な改革で教育の破壊が進んでおり、反対の意思を示すため教師生命をかけて座る」と述べたそうだ。

君が代・日の丸に反対する人は、思想・信条の自由を主張する。また、国旗や国歌がまず天皇の象徴であって侵略戦争……、といった国旗国家論も出てくる。とりあえず、ここで言いたい本質はそこじゃないので、その意見は全面的に認めることにする。

しかし、である。

卒業式で起立をしない、というのはいわゆる「実力行使」だ。通常、実力行使は最大限に議論を戦わせて、それでも合意が得られなかったときに行なう。例えば禁煙場所でタバコを吸っている人がいて、その人に対して腹が立つなら、
「すいません、ここはタバコは禁止です。吸うのをやめてください」
と言うべきであって、いきなりタバコを奪い取って放り投げたり、殴りかかったりしてはいけない。何度注意しても聞き入れてもらえなかったら、その時にタバコをむしり取れば良い。

この先生が、誰とどれだけ議論したのか、そこが大事だと思う。君が代・日の丸反対フォーラムなんかで、同じ意見の人たちと話し合ってもダメだ。例えば校長と、あるいは市議会や県議会の議員と、できれば市長と、徹底的に討論して、どうしても自分の主張を認めてもらえなかったなら、これはもう「立たない」という実力行使にすがるしかないのは理解できる。

ある若い現役教師にこの話をしたところ、
「教師って、そんな暇じゃないし」
と、ちょっと鼻で笑わ気味に言われた。暇がないから議論はしない、できない、だけど実力行使はする。これだと、ダメな大人の見本にしかならない。

ここに書くのは数回目になるが、日の丸・君が代に反対する教師は、一度でいいから、全校集会で児童・生徒たちを前に校長と議論して欲しい。真剣に、そして真摯に問題と向き合っている姿勢を見せることが真の教育である。だから、校長も、そういう提案があったら受け入れて欲しい。主義主張の違う相手をやっつけるなら、まずは言論によってだ。教師生命をかけるのなら、その公開討論を開催することに生命かけて欲しかった。
大阪市教委は21日、市立小計298校で同日行われた卒業式で、大領小(住吉区)の女性教諭(55)が国歌斉唱時に起立しなかったと発表した。
市教委は、起立斉唱を求める校長の職務命令に違反したとして処分を検討する。市立学校の卒業式で起立しなかった教員は、中学校を含め今春3人目。
発表では、女性教諭は校長から事前に職務命令を受けた際、「橋下徹市長による急激な改革で教育の破壊が進んでおり、反対の意思を示すため教師生命をかけて座る」と述べたという。
大阪府内ではこのほか、高槻、茨木、豊中各市の小中学校の卒業式でも教諭各1人が起立しなかったことも判明した。
(2012年3月22日08時22分 読売新聞)

2 件のコメント:

  1. Ciao Willwayさん
    >暇がないから議論はしない、できない、だけど実力行使はする。これだと、ダメな大人の見本にしかならない。

    全くその通りよね 苦笑

    しかし、いつも思ってるんだけどさ
    日本って、褒め言葉と悪口しか存在しない国で
    意見ってものの入り込むすき間さえない
    依って 冷静に意見の交換が誠にしづらい幼稚な国だなあと思います

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  2. >junkoさん
    褒め言葉と悪口しかない、というのは言い得て妙ですね。なるほど、このフレーズは覚えておいてどこかで使おうかなと思います。

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