2011年12月13日

侏儒の言葉

労働環境は厳しく、賃金は安い。
上司もロクでもない、いわゆるブラック企業で働く人たちにとって、
「働いたら負け」
という言葉ほどイラッとくるものはないかもしれない。
生活保護をもらって酒飲んでいる人のほうが、実質的に自由に使えるお金が多いのだから。
そんな現代を見透かしたかのような芥川龍之介の言葉。
強者は道徳を蹂躙するであろう。
弱者は又道徳に愛撫されるであろう。
道徳の迫害を受けるものは常に強弱の中間者である。

侏儒の言葉・西方の人

この本は、芥川龍之介による短い文章での皮肉やユーモアである。
なかなかに手厳しいものも多い。
良心とは道徳を造るかも知れぬ。
しかし道徳は未だ嘗て、良心の良の字も造ったことはない。
なるほど、たしかに道徳を教えたところで良心が育つというわけではない。

以下、いくつか引用。
正義は武器に似たものである。
武器は金を出しさえすれば、敵にも味方にも買われるであろう。
正義も理屈をつけさえすれば、敵にも味方にも買われるものである。
武器それ自身は恐れるに足りない。
恐れるのは武人の技量である。
正義それ自身も恐れるに足りない。
恐れるのは煽動家の雄弁である。
人生は一箱のマッチに似ている。
重大に扱うのは莫迦々々しい。
重大に扱わなければ危険である。
処女らしさ崇拝は処女崇拝以外のものである。
この二つを同義語とするものは恐らく女人の俳優的才能を余りに軽々に見ているものであろう。
恋愛の徴候の一つは彼女は過去に何人の男を愛したか、
或はどう言う男を愛したかを考え、その架空の何人かに漠然とした嫉妬を感ずることである。
我々を恋愛から救うものは理性よりも寧ろ多忙である。

2 件のコメント:

  1. 経験ばかりにたよるのは消化力を考へずに食物ばかりにたよるものである。同時に又経験を徒らにしない能力ばかりにたよるのもやはり食物を考へずに消化力ばかりにたよるものである。

    自分の本に線引いてました…こういう芥川の2面性を持った言葉には惹かれます。太宰、芥川あたりの作品って時代も今と違うのに何故か「わかるわ!それ!」ってしっくりくるんですよねぇ…そして2人とも素敵♥笑

    女は常に好人物を夫に持ちたがるものではない。
    …いつの時代もダメンズに惹かれる女の子っているんだなぁ。笑

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  2. >あっこ
    それもあって良いなぁと思ったんだけど、書き写すのに疲れちゃってw

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