2012年2月1日

統合失調症の告知について

統合失調症の告知に関して、有名な精神科医ブログで取り上げられており、その内容がちょっと看過できないものだったので、ここで論じることにする。

統合失調症の告知についての考察

上記エントリは、「告知するかしないか」という問題提起だったはずなのに、最後は「安易に告知する姿勢を非難する」という結論に達している。前半部で告知するほうがずっと楽だと書いて、最後の結論にもっともらしいことを述べれば、「告知する」医師は楽をしていて、さらには予後も悪くなる治療をしているような印象を与える。

これはズルい。

「安易な告知を非難する」という趣旨なら、

・真剣に考えたうえでの告知
・安易な告知
・真剣に考えたうえでの非告知
・安易な非告知

この四つが対比として挙がるべきなのに、「安易な告知」だけが引き合いに出されている。これでは、告知する医師はみな楽で安易なことをしているように受け取られてしまう。ミスリードも甚だしく、こんなものは「考察」とは言えない。

以下、引用しながら見ていく。

この記事では、
「統合失調症」では、特別な例を除き全く告知しないで治療を進める
と書いてあるが、これは「安易な非告知」ではないのだろうか。
俺は、告知するかしないかは、本人、家族の状況を見て決めるが、その判断が正解かどうかは誰にも分かりようがない。ただ、とにかく目の前の人を救いたい、そのためには何がベターかと一生懸命に考えるだけだ。考えない精神科医に存在価値はなく、あるスタンスで硬直するのは考えものだ。ブログの医師が硬直化しているとは言わないが、考えがやや偏っているのは確かだと思う。
本当は、告知する方が精神科医にとってずっと楽である。
青文字で強調してあるくらいだから、そう信じているのだろう。これはもう、本当にどうしようもないくらい偏った考え方で救いようがない。真剣勝負で告知すれば、それで楽になるということはありえない。上記記事と同じような例え話をするなら、
最初に統合失調症と告知して、治療があまりに順調で経過が良すぎるために、統合失調症について勉強した家族が他医に連れて行って「実は貴方のお子さんは統合失調症なんかじゃありません」なんて言われるくらいなら、最初から告知しないほうが100倍マシである。家族に誤診、悲観的観測と誤解されかねない。
こんなものはどうにでも例え話を作れるので、それを理由に告知するかしないかを論じるのはナンセンスなのだ。しかし、筆者はこう断言する。
最初に告知しないで統合失調症の治療に望むことは、自分に対して「退路を断つ」覚悟であることを示している。そうならざるを得ないのである。
分からない。
なぜそうなるのかが分からない。
先にも書いたように、例え話はいくらでもできるのだ。俺なんかからすると、告知しないほうがいくらでも退路が用意できそうに見える。
告知しない場合、統合失調症の治療に対するプレッシャーが全然違う。
告知したらプレッシャーが軽く、告知しなければ重い、そんなことがあるだろうか。少なくとも、俺は告知の有無で治療のプレッシャーの軽重が変わることはない。このような流れで、告知しないのは良心的な医師、告知するのは楽している医師と論じた後、
統合失調症に対する治療の姿勢だが、あらゆる状況を考慮せず「安易に告知する」精神科医の背景の方がむしろ問題だと思う。あのような甘っちょろいことを考えているから、良くなるものも良くならないのである。
最後にこの結論はないだろう。
非難しているのが「安易な告知」なのであれば、それは最初からそのように書くべきだ。しかもこの最後の引用から察するに、これは個人的に誰かに向けて言っているんじゃないだろうか。告知するか否かを中心に論じるように見せて、個人的不満を言いたかっただけなのでは?

この最後の煽り文句のせいか、コメント欄が賑わっていて、最後は毒々しい人が現れて終わった。少し気になったのが、パターナリズムに関して議論されている部分。必ずしも、
「告知しない = パターナリズム」
ではない。告知したうえで、
「大丈夫だ、信用しろ、俺に任せろ」
というメッセージを投げかけるパターナリズムもあるし、告知しないけれども、かわりに責任も負いかねるという姿勢だってある。


最後に、言い訳がましく言い訳を書いておく。今回は、あまりにも告知する医師を楽だと決めつけたような記事だったので、このように批判することになってしまったが、基本的には時どき見て参考にしているブログである。

4 件のコメント:

  1. 丁度卒論のために小児がんについての本を読み漁っているのですが、告知する・しないは患者さん、ご家族の状態によって選択されてました。でも、告知する・しないで治療に対するプレッシャーが変わる事はないと感じました。統合失調症に限らずどんな病気でも告知する医師も、しない医師もそれぞれ苦悩はあるんじゃないかなぁ…むしろ無い!と言い切られたら嫌です…

    そしてよく記事を読んでも告知しない方が逃げ道が作れるような気しかしません!ちょっと何が言いたいか本質がわかんないですね。

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  2. 昔、めちゃ込みの精神科で言われた言葉。
    (自分はどういう状態なのか知りたかったので診断名を聞いた。それが余計だったか)
    『あなたみたいな人にそんな事言ったらとんでもない事になるから言えません!』 呆気。。。。
    一体どんな事になるのか。突き放されたように思った。
    そこは投薬治療中心の所で、話を聞いてほしいなら他の病院(具体的に名前を挙げて)に行けとも言われた。
    その分親切なのか…
    医者も人間だからと今では思うが、彼女が隠した診断名は何だったのか、未だに聞いてみたい。

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  3. >あっこ
    当該ブログの先生は、結構おもしろいエピソードを書くし、
    参考にもなる記事が多かっただけに、この記事はショックだったね。
    だからこそ、思いっきり突っ込んでしまったんだけど。

    俺も何回か読んだんだけど、やっぱり誰かへの私的恨みを感じるんだよねw

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  4. >匿名さん
    そういう言い方はないですよね。
    ネットという責任の所在のはっきりしない場所では、
    確かに診断を告げるなどの断言は危険だと思いますが、
    それにしたって言い方というものがあるというものです。

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